世界には、その国独自の相撲がなんと150も存在する!
西尾 白鵬さんは相撲協会退職後に、相撲の世界的な普及活動、さらには相撲のオリンピック種目への採用をめざしているとのこと。大相撲は日本の伝統文化としての位置づけがあるかと思うのですが、世界への普及をめざす理由について聞かせください。
白鵬 16年前に、野球賭博など相撲界にさまざまな問題が起こりました。さらに東日本大震災も発生し、このままでは相撲をめざす子どもたちがいなくなっちゃうんじゃないか、という危機感を覚えたのがきっかけです。そこから白鵬杯をスタートさせました。苦労は多かったですが、4回目くらいから、北海道から沖縄まで全国から子どもたちが参加してくれるようになったのはうれしかったですね。
その後、阿武咲や大の里など、かつて白鵬杯に出場した選手が成長し、大相撲でも活躍するようになり、日本の相撲界への普及についてはある程度結果が出ていると思っています。
いっぽう国際相撲連盟ですが、現在、世界で87か国が加盟しています。
でも、実際に大会に参加しているのは30から35か国にすぎません。それはなぜか。国の支援がないからです。交通費や宿泊費。すべて自腹で来ているわけですから。それがオリンピック種目になればこの87か国が気持ちよく出場できる。そのための国際大会を開催したいというのが私の想いです。 調べてみて分かったことなのですが、世界の150か国は、 その国独自の相撲が存在するんです。
西尾 韓国のシルムとか、モンゴル相撲とか?
白鵬 はい。相撲は観ていてシンプルで、分かりやすい。さらに重要なのがもう一つ。相撲は格闘技なのにダメージが少ないんですね。例えばボクシングだったら数か月に一度しか試合できないですよね。
西尾 年間90日もやる格闘技って相撲くらいですね。
白鵬 でも90日ってさすがに多いと思うんですよ。地方場所もありますし、力士への負担が大きく、いいパフォーマンスが出せないときもある。
西尾 最近はけがで休場している横綱、大関が多く見られますね。日程的、制度的な見直しをアマチュアから先導し、示していけたら、大相撲が参考にしてくるかもしれない。
白鵬 そうですね。プロとアマとでウィンウィンの関係を作りたいと思います。例えば野球だと国内リーグ のほかにWBCもあります。でも相撲だと一つの道しかないんです。そこにもう一つの道を作りたい。
西尾 相撲には、可能性と課題がある、ということですね。白鵬さんが培ってきた経験は、二つの橋渡しに大いに役立つと思います。話は変わりますが、白鵬さんは最近、SNSの活動にも力を入れているようで。YouTubeでの朝青龍さんとの対談は、大きな話題となりましたね。
白鵬 じつは動画を撮影したのは、たまたまでして。その日、初めて二人きりでしゃべる機会があり、話しているうちに、あのころはああだった、こうだったなどと、段々と気持ちが溶けていくじゃないですか。その勢いで、「せっかくだから記念に動画を回そう」ということになりました(笑)。先輩であり、真剣に戦った相手でもあるからこそ、今も尊敬しています。
西尾 ちなみにほかに対談してみたい人は?
白鵬 吉田沙保里さん。あとは柔道の野村忠宏さん。やっぱり子どもたちって強い人に憧れて、そこに興味を持つわけですから。機会があるといいですね。
西尾 その世界を極めた強い方たちとの対談、楽しみにしています。
後編へつづく
文/西尾克洋 撮影/有坂政晴













