極右の定義とは何か

ここからは、いよいよ本題の「極右」の定義を参照していこう。

はじめに、「極右(far right)」というのは包括的概念である。極右という大きなグループの中には、「過激右派」と「急進右派」と言う2つの類型がある。「過激右派(extreme right)」とは、民主主義そのものに敵対する勢力で、いわゆるネオナチやネオファシストのような集団を指す。これに対して「急進右派(radical right)」とは、民主主義の制度自体は認めながらも、自由や平等といったリベラルな解釈を拒否する政治勢力のことである。

「極右の概念図」(Pirro, A. L. P. “Far right: The significance of an umbrella concept.” Nations and Nationalism, 29(1), 101–112, 2023より)
「極右の概念図」(Pirro, A. L. P. “Far right: The significance of an umbrella concept.” Nations and Nationalism, 29(1), 101–112, 2023より)

つまり「極右」とは、反民主主義と非リベラル民主主義のあいだに広がる集合的アクター(政党、運動、団体) を含む包括的なカテゴリーなのだ。しかし極右に属する「過激右派」と「急進右派」は一概に区別できるものではない。選挙においては形式的には民主主義のルールに従っている「急進右派」が、背後で反民主的な「過激右派」と結びつくことも少なくないからだ。

イタリアの急進右派「同盟(Lega)」と極右組織カーサ・パウンドの協力関係、ハンガリーのヨッビクが国内極右団体と共闘してきた事例、あるいはドイツAfD内部に存在する極右派閥などがその例である。

フランス国民連合も、公には過激派と距離を取っているように見せながらも、実際には極右学生組織GUDやネオファシスト団体Tenesoun出身者が同党に入り込み、人脈や資金面で関与していることが繰り返し指摘されてきた。このように、急進右派と過激右派の境界はしばしば曖昧になるからこそ、より抽象的で包括的な呼称として「極右」という用語が有効なのである。

では、極右政党か否かを見極めるにはどうすれば良いのだろうか。先に述べたように、街宣車や旭日旗、露骨なヘイトスピーチといったステレオタイプに重ねるのは必ずしも適切ではない。また上の定義に照らせば、「彼らは民主主義的手続きを経ている政党である以上、極右とは呼べない」といった類の反論も当たらない。そこで注目すべきは、彼らの政策のコアにあるイデオロギーである。

政党の政治イデオロギーは、「コア」と「周辺」から構成されるが、極右を理解するうえでは、その「コアイデオロギー」を特定することが決定的に重要だ。なぜなら、実際の政治キャンペーンにおいては、極右のレトリックが戦略的に他政党に利用されることが少なくないからである。

「制御不能な大量移民」といった極右のレトリックが右派や政権を担う与党に取り込まれるのはその一例だ。さらに、政党自身による自己規定はしばしば政治的な戦略を帯びており、必ずしも信頼できる指標とはならない。したがって、政党が公に発表する公式文献に絞ってその質的分析を行い、思想的特徴を分類することが重要なのだ。