漫画原作デビューが大ヒット作に!

――この漫画を手掛けるまでの、七海さんのキャリアを教えてください。

七海仁(以下同) アメリカの大学院でジャーナリズムを学び、帰国後は日本の通信社に勤務していました。その後、出版社で英文誌の編集長を経て、5年前に初めて漫画原作者として『Shrink』の連載を始めました。

――原作者デビューが『Shrink』とはすごいですね。なぜ、精神医療をテーマにしようと?

家族が精神疾患を患ってもう10年以上になるんですが、その間「どうすれば、この病はよくなるんだろう」「病院以外に協力を得られる場所はどこだろう」といろいろ調べたことを、家族会でお話ししたりしていたんです。家族会が終わってから、「さっきお話ししていたこと、詳しく教えてください」と行列ができることが何度もあって、なぜこんなに当事者や家族に、必要な情報が行き渡らないのかなと思っていました。

たぶん、世間的に精神医療のことを話すのは恥ずかしいことで、精神科に通うことは弱い人間のやることだと思われている。だから、当事者やご家族の方が表立って情報交換をしないんじゃないかと思いました。その状況は変えたほうがいいだろうというのが、この作品を書こうと思った理由のひとつでしたね。

『Shrink〜精神科医ヨワイ〜』より
『Shrink〜精神科医ヨワイ〜』より
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――作画の月子先生とはどのようにマッチングしたのでしょうか?

そこは編集部主導です。何人かの方にコンペで描いていただいたそうですが、同じシナリオでも作家さんによってまったく違っていらっしゃって。なかでも、月子さんはページ数が一番多くて、柔らかく優しいタッチで描かれていたので、精神医療という難しいテーマを扱うのに、いいんじゃないかというお話になったと伺いました。

――シナリオを書くときに意識していることはありますか?

取材先の方々に対して失礼のないよう、また、しっかりお話ししていただけるよう、まずは私自身が勉強をすることです。取材を重ねて得た知識や情報は、原作にする段階で載せられるのは2割程度で、残る8割方をいったん捨てなくてはいけません。やはり、その取捨選択が非常に難しいところですね。