会長の死と決別「サリーが最後のオンナや」
会長との生活に依存する自分に、疑問を抱き始める。
「2年経ったころ、ふと『これでいいのかな』って。もっと自由がほしいという思いが募ってきたんです」
どんなに深い縁であっても、別れの時は訪れる。サリーさんの中に「自立したい」「家族を持ちたい」という願いが芽生え始めた時、会長の奥様が亡くなるという大きな区切りが訪れた。彼女はそれを機に、マンションを出ることを決意。
マンションを出てからわずか3か月後、サリーさんは新聞の訃報欄に、会長の名前を見つけることになる。
「病気だったことも、亡くなったことも知りませんでした。新聞を見て、本当にびっくりして……。でも、会長さんがいつも言ってくれていた言葉を思い出しました。『サリーが最後の女や』って。当時は『何を言ってるんだろう』って思っていましたけど、今思えば彼なりの深い愛、そして私という存在への信頼だったのかもしれません」
今、サリーさんが全国の商店街やお祭りでドレス姿を披露し、多くの人々に「元気が出る」と喜ばれているのは、紛れもなくあの2年間の経験があったからだ。
「会長は私に、単なるお金やブランド品をくれたのではありません。世界に通じる作法、自分を磨き続ける覚悟、そして『誰かのために美しくあること』の尊さを教えてくれたんです。今の私が自分らしく活動できているのは、間違いなく彼のおかげです。本当に心から感謝しています」
何一つ持たずに始まった会長との生活。しかし、そこで得た「プリンセスとしての魂」は、その後に待ち受けていた夫の失踪、全財産の喪失というさらなる絶望から、彼女を救い出す唯一の武器となるのだった。
取材・文/木原みぎわ













