#1 <新神宮球場>開示文書で判明!打球の弾道シミュレーションに「1964年の王貞治のホームラン」を使用している“怪しい背景” から続く
野球場なのに照明塔とバックスクリーンがない?
前編では新神宮球場の設計にあたり、60年前の王貞治のホームランで弾道シミュレーションをしていたことや、新たに建設される高層ビルから生まれるビル風を考慮していない可能性について報じた。
これだけでも、そのデタラメぶりが気になるが、さらに驚くのは事業者が公開したパース図(建築物の完成予想を立体的に表現した図)だ。ここにはなんとプロ野球の興行に必要な照明塔とバックスクリーンが存在しないのだ。
言うまでもなく球場の広範囲を照らす照明塔はナイター(夜の試合)を行うプロ野球には必要不可欠。また、バックスクリーンも打者・捕手・球審が投球を視認しやすくするため、本塁反対方向の外野に単色の壁で設置することになっている。
はたして、これは設計漏れなのか? 市民たちがプロジェクトサイトで質問した結果、事業者からは以下の回答が得られた。
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【質問】
・照明塔はどうなりますか。照明塔をつけることで計画図も変わります。ナイターの計画はないのでしょうか?
・バックスクリーンはどこでしょうか。つけなければいけないものですが、つけることでかなり外観が変わります。
・計画図とはいえウェブサイトに載っているパースのように疑問を持たれるようなものを出す事は野球関係者には信じがたいことなのですが、きちんとした検討はされているのでしょうか
【回答】
照明塔については景観に配慮し、上部に照明設備、下部に大型ビジョンを一体化したものとすることで大型の工作物の数を抑えた計画を検討しております。バックスクリーンについては適切なプレイ環境を確保するうえで必要な高さを前提に検討してまいります。なお、現在プロジェクトサイトで公開しているパースはあくまで完成イメージですので、今後の詳細な設計により変更となる場合があります。
出典:プロジェクトサイト回答(2023年8月7日公表分)No14「照明塔・バックスクリーン」
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照明塔とバックスクリーンについて、事業者はいずれも設置を「検討」していると回答。また、パース図はあくまで「完成イメージ」のため「変更となる場合があります」としているが、これでは野球場の知識が無い者が設計しているか、「あとで変更する」という言い分で実際よりも見栄えの良いパース図を作成したと判断されても仕方がない。
実際、市民からの「計画図とはいえウェブサイトに載っているパースのように疑問を持たれるものを出す事は野球関係者には信じがたい。きちんとした検討はされているのでしょうか」という指摘には、まったくのゼロ回答だ。やましいことがなければ回答すればいいだけなので、この市民の指摘通り「きちんと検討していない」のではないか。
*ちなみに事業者は他のパース図でも正確な情報を市民に知らせないためのトリックを駆使している。詳細は筆者のtheLetter「神宮外苑パース図が3つの詐術で隠した不都合な実像」(2023年7月19日)参照