ブラックマヨネーズをほうふつとさせたトットの漫才

振り返れば、1回戦と準決勝のネタは金属バットらしさを残しつつ賞レース向けに調整されていた。象徴的なのは準決勝で披露し、グランプリファイナル史上最高得点を記録した「祝日ランキング」。

誰もが知る祝日という題材を、わかりやすいランキング形式で包み、自分たちの「いかつさ」が添えられていた。こうした糖衣に包まれたような「いかつさ」を1錠、2錠と飲み込んでいたからこそ、決勝でのボケのないエピソードに散らばった「いかつさ」の種にも引き寄せられ、観客は今か今かとマグマを溜め続けたのだろう。

「環境に合わせることもできますよ」という姿勢を途中まで見せつつ、最後の最後に「環境のほうが俺たちに合わせろ」と突きつける。その技術と胆力に、笑いつつ舌を巻いた。

しかし、である。優勝したのは金属バットではない。トットだ。彼らのネタの完成度とおもしろさこそ、もっと話題になるべきだ。

優勝後にフジテレビの人気番組に出演するトット(「THE SECOND」公式SNSより)
優勝後にフジテレビの人気番組に出演するトット(「THE SECOND」公式SNSより)

1回戦と準決勝のネタはいずれも、少数派扱いされがちな多田に桑原が理詰めで迫る構成だった。1回戦で言えば、多田は電子マネーを使わない頑固な現金派。桑原は、現金派がいるせいでレジが混むと主張し、多田に考え直すよう迫る。多田は「セルフレジ行ったらええやん」と反論し、桑原は「セルフレジは買えないものがあるんですよ。お酒とか」と再反論する――。

理屈の応酬を軸にした漫才は珍しくない。原点としてしばしば挙げられるのは、2005年のM-1のブラックマヨネーズのネタだ。しかしブラマヨの場合、少なくともネタの導入部ではボケの主張が明らかに奇妙で、「変」と「まとも」の対立が明確だった。

一方、トットの場合はどちらも極端におかしくはない。現金派にも電子マネー派にも道理がある。あえて言えば、桑原の理詰めの厳しさがやや「変」だが、世間の良識を体現しているつもりの方がちょっと「変」という点でひねりがある。トラブルが「正しさと正しさの衝突」と見なされがちな時代を背景に、ブラマヨ的な構図が現代に更新されている。

トットの対立は徐々にズレながら展開していく。滑らかなシーソー構造が6分間、中だるみなく動き続け、会場を笑いで満たした。