過去最多のエントリー数

「すっごい苦しかった。すごいですよね、R-1って」

芸歴37年の大ベテラン・島田珠代が涙をぬぐいながらそう語る映像から、今年の『R-1グランプリ』(21日、関西テレビ・フジテレビ系)の決勝は始まった。今大会で準決勝まで残った彼女の「苦しさ」の理由はわからない。ただ、ピン芸には他の芸にはない難しさがあるとはよく言われる。

そんなピン芸の大会で、今年は過去最多6171人という史上最大のエントリーから、9人が最終ステージに立った。

ファーストステージを3位で抜けたのは、昨年のM-1で準優勝に輝いたドンデコルテの渡辺銀次だった。茶色いスーツに身を包んだ身綺麗な渡辺が、舞台袖から1人でマイクの前に出てくる。漫談だ。渡辺は紳士風の自己紹介を済ませ、「今日はですね、今まさに国民が強いられている理不尽に対して、声を上げにまいりました」と切り出す。

昨年のM-1で披露したドンデコルテの漫才は、政治的な話題も散りばめたネタだった。「国民」「理不尽」「声を上げる」といったワードが、そんな漫才との連続性を感じさせる。スムーズな導入。しかし、次の言葉で空気が変わる。

「洗濯機に耐えられるブラジャーを開発しろおぉ!」

ブラジャーが手洗い推奨なこと、100年以上前から手洗いが基本なこと、そこから進歩が見られないこと。糾弾口調で熱く語る渡辺。観客の頭のなかに、じわじわと違和感が積み上がっていく。なぜこの人はこんなにブラジャーに詳しいのか。その疑問が次の言葉で解かれ笑いに変わる。

惜しくも優勝に届かなかったドンデコルテ渡辺銀次(本人SNSより)
惜しくも優勝に届かなかったドンデコルテ渡辺銀次(本人SNSより)
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「(昔はブラジャーを)乳バンドとか乳ホルダーと言っていた。そう、そんな露骨な表現しかなかった時代から、ずっと同じ洗い方をさせられてるんですよ、させられてないんですけど私は」

どうやら、この人はブラジャーをしているようだ。そんな確信を観客に9割9分抱かせつつ、本当にブラをしているのかどうか最終的な結論を出さない。