「金太郎、帰国する。」(集英社文庫・コミック版7巻収録)
負けを認めたときにできること
『サラリーマン金太郎』第66話では、金太郎が失敗したナビリア工事の損害額が明かされる。その額は、57億円だ。
大企業のヤマト建設としても、これはかなり痛い額だろう。だが、ここでまず思うのは、「いや、これ金太郎のせいじゃないだろ」である。
作中でも社員たちが「金太郎が悪いというわけじゃないでしょう」と話しているが、まさにその通りだ。
そもそも現地は賄賂まみれで、ワーカーもろくに手配できておらず、工事は不測の事態でたびたび遅れ、最後は内戦まで始まった。
2年半にわたって砂漠で命を削るような仕事をさせられ、どうにか生きて帰ってきたのが金太郎だ。むしろ、ここまでやらせておいて、金太郎のほうが会社に請求したいくらいである。
そんな金太郎は、社長室に入るなり元気いっぱいにこう報告する。
「矢島金太郎ーっ ナビリア政府通信省から受注したマイクロウェーブ通信局建設工事、全力を尽くして工事の完成をめざしましたが、会社に多大なる損害を与え、今戻りました みやげは、サソリの干物と、サハラの砂であります!」
この様子に黒川社長も「ボロ負けして帰ってきたわりには、えらく堂々としているな」とツッコミを入れる。
すると金太郎は、アフリカの地で覚えた「インシュアラー」と返す。神のおぼしめし、という意味のその言葉を、あの金太郎がさらっと口にするあたり、この2年半がただの失敗ではなかったことがわかる。
なお、会社が今回のことで金太郎に下した処遇は、主任への昇格だった。失敗した社員を切って終わりにすれば、会社にとっては本当にただの損失になる。だが、大失敗という貴重な経験をした社員を残すことで、会社としてもそれを次に生かせる。そういう判断をヤマト建設は下したのだろう。
金太郎の爽やかすぎる開き直りシーンは、ぜひ漫画で読んでほしい。























