「金太郎、大暴走する。」(集英社文庫・コミック版1巻収録)
暴走族はなぜ走るのか
『サラリーマン金太郎』第11話では、なんと2万台規模の大暴走が描かれる。関東制圧を目的に、金太郎が率いる八州連合が東京の街を駆け抜ける。最初は2000人規模だった集団に、噂を聞きつけた各地のチームが次々と合流。その数は、最終的に2万台へと膨れ上がる。
現実なら大事件だ。はっきり言って大迷惑。
作中の警察官たちも叫ぶ。「世の中のルールは守って暮らす。それが人間の生き方だ」「お前たちの行為がどれだけ世間に迷惑かけているか考えるんだ」
正論である。ぐうの音も出ない。では、なぜ暴走族は暴走するのか。
暴走族の起源は、1950年代の「カミナリ族」にさかのぼると言われている。戦後まもない時代の中で、オートバイで都心を走り回った若者たちがその始まりという。やがて70年代に入り、チーム名、特攻服、上下関係などがそろい、現在イメージされる「暴走族」の形が出来上がっていた。
暴走族の最盛期は1980年代頃で、その数は約4万人にも及んだとか。受験競争や校則、会社社会の規律が強まる中、「決められたレール」への反発もまた強まっていた時代だった。その空気が、これだけの数を生んだのかもしれない。
では彼らはどのように暴走するのか。
金太郎たち八州連合は、あらかじめルートを予告して走り抜ける。「自由なんだよ 誰かが勝手に、便利のために作ったきまりを、俺たちは自由な走りで叩きつぶす。それを邪魔する奴は、誰であろうとぶっこ抜く!」という信念のもとに。
先には警察たちが待ち構えている。それでもルートは変えない。変更はしない。正面から通り抜ける。
もちろん、暴走族の行為は迷惑だし危険だし、肯定はできない。
だが、日本にもそんな時代があったことを忘れてはいけない気がする。過去を美化するわけではない。作中では警察官たちとの対立構造が描かれ、その正論もしっかりと響く。
これは、いいか悪いかで見る話ではない。貫くか、曲げるか。
第11話は、その時代の空気と熱をまるごと閉じ込めた一編だ。























