米国は軍事作戦の直接経費に加え経済的不確実性という「負債」を抱え込む
経済的な側面では、イスラエルは脅威の低減により長期的な安全保障コストを削減できるという大きなメリットを得た。イスラエルが米国の軍事支援を維持しつつ、自国の防衛コストを肩代わりさせた構図は明白である。
米国は軍事作戦に付随する莫大な直接経費に加え、経済的不確実性という「負債」を抱え込むこととなった。
ワシントン・ポスト(3月2日)は、今回の攻撃を受けて市場で原油価格が急騰し、一時1バレルあたり100ドルをうかがう展開になったと報じている。
ジェトロ(JETRO)の分析(3月3日)でも、ホルムズ海峡の緊張による物流の混乱が、米国内のインフレ抑制やインフラ投資に回すべきリソースを食いつぶし、ガソリン価格に直撃するリスクが指摘されている。トランプ政権が掲げていた「米国経済の再建」という公約は、他国の安全保障コストを負担することになってしまった。
トランプ大統領は、今回のイラン攻撃を「自らの決断による強いアメリカの復活」と位置づけようとしている。しかし、ルビオ氏の発言と、それに対するMAGA層の猛反発は、別の真実を浮かび上がらせた。
残ったのは、引き裂かれたアメリカの世論
つまり、今回の事態の本質は「イスラエルが戦略的な必要性から米国を動かし、自国の安全保障上の宿願を果たした」ということである。
真の勝者は、自国の手を汚さず、米国の軍事力と政治的資本を最大限に利用して宿敵を叩いたイスラエルのネタニヤフ政権だ。
対する米国は、中東での新たな紛争の種を抱え込み、国内では「アメリカ・ファースト」の理念を巡る支持層の内紛という、極めて高い代償を支払うこととなった。
トランプ氏は「強者」を演じているが、その舞台装置を作ったのはイスラエルであり、幕が下りた後に残ったのは、引き裂かれたアメリカの世論であった。
文/小倉健一













