平気で噓をつく

裏表の激しい人間に対して、なぜそんなことができるのか理解に苦しむということは多々あるが、典型的なのが平気で噓をつくことである。

本人の前ではもち上げておいて陰でこき下ろすのも、人の業績を横取りするのも、噓をついていることには違いないが、もっと端的に自己保身や出世のために平気で噓をつくということがある。

そのような同僚を間近に見ている人は、すぐにバレそうな噓も、言った時点で周囲にバレバレの噓も、平気でつくのに呆れることがあるという。

「彼女と一緒にいると、ほんとに驚かされることが多いんです。

この前も、上司から頼まれていた仕事を忘れていたみたいで、進捗状況を尋ねられて慌ててる様子だったんですけど、『じつは先輩から急ぎの仕事を振られてしまって、そっちにかかりっきりだったので、まだできてないんです。急いで取りかかります』って言ったんです。

該当する先輩って、私しかいないんですよ。しかも、私は何も仕事を振っていません。私に聞こえてるのに、気まずいという感覚がないんですよね。

今朝も、取引先からの振り込みがないがどうなってるのかと問いただされたとき、『どうしたんでしょうね。ちゃんと請求してあるんですけど。ちょっと確認してみます』と言って、慌てて廊下に出て行ったから、そっと後をつけてみると、取引先に電話していて、これから請求書をメールで送るので早めに振り込んでほしいと頼んでいるんです。

きっと請求書を出すのを忘れてたんですね。上司が先方に連絡したら、すぐにバレてしまうのに、よく平気であんな噓を言えるなと、ほんとに驚きです」

このようにすぐにバレそうな噓、目の前の相手のせいにする気まずい噓にも呆れるが、責任逃れのために、その場しのぎの噓を平気で口にするのは日常茶飯事だという。

バレそうな噓を平気でつくも気づいているのはごく一部(写真/shutterstock)
バレそうな噓を平気でつくも気づいているのはごく一部(写真/shutterstock)
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すぐにバレそうな噓を、なぜ平気で言えるのか。

それは「どうせだれもわざわざ確認しないだろう」とわかっているからである。さらに、多くの人は気まずさを避けるため、あえて指摘しないことも多い。

先の事例で言えば、上司が先輩に「ほんとうに彼女に急ぎの仕事を振ったのか?」と尋ねることは、まずないはずだ。仮に先輩が、彼女が自分のせいにしているのを耳にしても、「それは事実ではありません。私は急ぎの仕事を振っていません」とその場で否定するのは気まずいため、口にすることはないだろう。

2つめの事例でも、上司が取引先に直接、振り込みを催促することは考えにくい。

要するに、噓が容易に通ってしまうのは、「だれも確認しない」「だれもその場で否定しない」という前提があるからである。

そして、そのような経験が積み重なることで、「噓はバレないものだ」という思い込みはますます強まっていくのである。