なぜ?Z世代とその上の世代が互いに疑心暗鬼 

今、職場内で20代前半のZ世代と35歳以上のミドル世代の間で深刻な分断が生じている。今年入社した新人は配属先でのOJT(職場内教育)の最中であるが、企業研修を手がける外部講師は「まだ一人前とはいえない入社2~3年目の社員に指導役を任せようとする管理職層が増えている」と語る。

「以前なら中堅の30代社員が指導役を担当したものだが、新人とのコミュニケーションギャップを気にしてか、何を話していいかわからないという不安もあり、入社2~3年目の社員なら年齢が近く話も通じやすいからという理由だ。

上司も『君に任せる。あとはよろしく』というパターンが多い。一方、指導役も『自分じゃ無理でしょ』という不満を抱える人もいれば、鬱になったとか、夜シャワーを浴びていてもずっと育成のことがこびりついて休めないという声も聞く」

Z世代とその上の世代が互いに疑心暗鬼を抱いている様子がうかがえる。しかも、自分たちに指導役を押し付けられたZ世代の不満や恨みはミドル世代に向く。

結果的に分断がさらに拡大していくことになる。なぜミドル世代はZ世代を避けようとするのか。建設関連業の人事担当者はその事情をこう語る。

「10年前は当社でも『お前、仕事やる気があるのか』と叱りつける根性論のミドル層も多かったが、今は部下に気を遣う人が増えている。今の新人は大体叱られたことがない人たちが多い。

例えば取引先から電話の応対が悪いというクレームを受けて、数人の若手社員を叱りつけた上司がいた。ところが若手の1人が『僕は悪くないのにどうして一緒に叱られなければいけないんですか、人格の否定です』と文句を言ってきたことがあった。

上司もあ然としていたが、昔と違って叱り方を間違えれば、すぐに反発を招く。それが重なり、萎縮している上司も少なくない」

叱り方を間違えれば、すぐに反発を招く時代だ…
叱り方を間違えれば、すぐに反発を招く時代だ…
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Z世代の特徴の一つ「厳しい指導は苦手」 

分断の背景にはZ世代の働き方や仕事に対する価値観が昔と変化していることにある。Z世代はSNSに慣れ親しんでいる一方で、対面コミュニケーションの経験に乏しく、『仲間』以外の世代との距離感に戸惑う面もある。また、タイパやコスパを重視し、唯一の正解を求める傾向がある。

仕事の面では、①厳しい指導は苦手、②タイパ・コスパを重視し、自分にとって意味があることを重視、③長時間労働よりもプライベートを重視、④会社への見切りが早く早期離職の傾向――という特徴がある。その特徴は調査でも浮き彫りになっている。

リクルートマネジメントソリューションズが調査した「理想の職場・上司」の2013年入社の社員と、2023年入社のいわゆるZ世代の比較によると、2013年の新入社員の理想の職場は「皆が1つの目標を共有している」「お互いに鍛え合う」「活気がある」職場が上位を占めていた。

しかし10年後の2023年は「お互いに個性を尊重する」「お互いに助け合う」職場が上位を占めている。

また、理想の上司像も2013年は「周囲を引っ張るリーダーシップ」「仕事に情熱を持って取り組む」「言うべきことは言い、厳しく指導する」上司が上位を占めていたが、2023年は代わって「一人ひとりに対して丁寧に指導する」「よいこと・よい仕事をほめる」上司が上位を占めている。

とくに厳しく指導する上司は20.6ポイントも下がっていた。この傾向は2025年の調査でも変わらない。