「ここで書かないと、彼らのことが何も残らない」

──「電気ANN」はハガキ職人も面白い人たちが多かったですよね。ネットのない当時、自分のセンスを試したい若者の熱量も今と違ったのでは?

そういう若者は今もいるでしょうし、それこそ「ネット大喜利」みたいなのは、ハガキ職人の現代の形なのかなと思います。ラジオの場合、やっぱりパーソナリティーが笑ってくれるかどうかっていうところは、原動力として大きかったでしょうね。

それに当時の方が、放送作家になりたいという若者は多かっただろうし、その前段階としてのハガキ職人というのは、今とは熱量が違ったんじゃないかと。

──放送作家は若者にとって、憧れの職業だったんですね。

秋元康さんなんて、放送作家出身で業界のトップまで行った“チャンピオン”じゃないですか。自分の世代で有名な作家さんだと、鈴木おさむさんやリリー・フランキーさん、桜井慎一さんもいます。

放送作家っていうのは「メディアの中で生きる」っていう、腹をくくった人たちなんですよ。業界に身を捧げる覚悟がなければダメで、自分にはそれはできなかったですね。だから担当していた番組の終了とともに、ニッポン放送を離れるという選択になりました。

ただ、「電気ANN」で自然と身についた台本の書き方や、スタッフとの連携術が、後の「ココリコミラクルタイプ」などの放送作家仕事でも役に立ちましたね。仕事のイロハを「電気ANN」で学ばせていただいたと思います。

終始、電気グルーヴへのリスペクトをにじませながら語った
終始、電気グルーヴへのリスペクトをにじませながら語った

──電気グルーヴとの出会いがなければ、椎名さんの生き方もかなり違っていたのではないでしょうか。

いやあ、どうなっていたか、まったく想像できないですね。石野さんからも先日「俺があってのオマエだからな」と言われたので「重々承知しております!」と答えました(笑)。

──電気の周辺人物が2人亡くなるという「その後」を書いた最後の章は、かなりショッキングな内容でした。

そうですね……最初は書くつもりもなかったんですよ。自分の話ばっかりになっちゃうし、あくまで「電気の本」にしたかったので。でも、ここで書かないと、彼らのことが何も残らないなとも思いました。

あの時代を一緒に楽しんだ人たちの記録として、書いておこうと思いました。

──サブカルをずっと好きなまま、それを仕事にして食っていくということの大変さについても考えさせられますね……。

本当にね、どうやったって、生きていかなきゃなんないので。自分だって、このままずっと食っていけるとも思ってないし、常に将来は不安ですね。AIでいろんな仕事がラクになるのかと思ったら、全然そうならないし(笑)。

──そういえば、本書を書くにあたって、電気のお二人には話を通したのでしょうか?

実は担当編集者から話は行ってるものだと思っていたら、かなり書き上がった段階で、まだ何も伝わっていないことが分かって……。でも昨日、石野さんから電話が来て、一応ほめていただきました。瀧さんとは近々サッカーを観に行く約束をしているんですけど、そのときに説教食らうと思います(笑)。

取材前に愛用のメガネがなぜか壊れるハプニングも……
取材前に愛用のメガネがなぜか壊れるハプニングも……
すべての画像を見る

取材・文・撮影/Shoichiro Kotetsu

〈プロフィール〉
椎名基樹(しいな・もとき)
1968年、静岡県生まれ。ライター、構成作家。高校生の時、「人生」のメンバーとして活動。当時の芸名は「ポートピア83才」。上京後、見習い放送作家として、「電気グルーヴのオールナイトニッポン」のスタッフに加わる。

オールナイトロング -私にとっての電気グルーヴのオールナイトニッポンとその時代
椎名基樹
オールナイトロング -私にとっての電気グルーヴのオールナイトニッポンとその時代
2026/2/18
2750 円(税込)
496ページ
ISBN: 978-4575320459
1991年から1994年まで放送された深夜ラジオ番組『電気グルーヴのオールナイトニッポン』。多くの芸人、文化人に影響を与え、90年代のサブカルチャーを代表する伝説的番組。 本書は、彼らの静岡時代からの後輩で、本放送に放送作家として入っていた椎名氏による回想録。ほぼ同時期に上京し、友達として遊び、仕事仲間として騒いでいた人物が、メジャーデビューした年に始まり、わずか3年で終わった青春と熱狂の日々と、その前後の笑止と狂気の沙汰の後先を振り返る。。
amazon