「世界の工場」と呼ばれた大国の成れの果て

海を隔てた隣国から届く映像は、現代の「廃墟」がいかに静かで、そして恐ろしいかを雄弁に物語っている。

かつて建設クレーンが林立し、トラックの轟音が鳴り響いていた中国の地方都市。そこには今、コンクリートが剥き出しになった巨大な未完成マンション群が、墓標のように延々と連なっている。

「鬼城(ゴーストタウン)」と呼ばれるこれらの建築群には、ガラスの入っていない窓枠が虚ろな眼窩のように口を開け、誰かが住むはずだった「未来」が雨風に晒され続けている。

2025年、中国経済の実態は、まさにこの映像そのものだ。中国政府が公式に発表する「5%前後の成長」という数字が、いかに白々しいものであるか、伝わってくる現地の惨状を見れば明らかである。

「高市だけは許さん!」追い詰められた習近平が日本叩きに走る本当の理由…“ソ連化”する実体経済はボロボロ、共産党内部からも突き上げ_1

不動産投資は前年比で二桁のマイナスを記録し、鉄鋼、家電、内装といった関連産業を含めれば、その崩壊の余波は数億人の雇用を直撃している。インターネット上では、「9億人が月収4万円以下の貧困層に転落した」という悲鳴に近い投稿すら散見される。

かつて世界を席巻した「爆買い」の勢いは見る影もなく消え失せ、職を失った若者たちは絶望し、路上で「寝そべり(タンピン)」を決め込んでいる。これが、かつて「世界の工場」と呼ばれ、飛ぶ鳥を落とす勢いだった大国の成れの果てだ。

巨龍はなぜこれほどまでに無惨な姿に

なぜ、巨龍はこれほどまでに無惨な姿を晒すことになったのか。その原因は、市場原理という普遍的なルールを無視し、イデオロギーという名の妄想に固執した一人の独裁者の失政にある。

習近平国家主席が進めてきた経済政策は、合理性を欠いた愚行の連続であったと言わざるを得ない。この惨状を招いた根本的な構造について、専門家は「経済のソ連化」という極めて鋭い言葉を用いて分析している。

外交専門誌『外交』Vol.94に掲載された、九州大学教授・益尾知佐子氏による論考「『玉虫色のコミュニケ』に浮かぶ中国政治の対立軸」から、その本質を突いた一節を引用しよう。