「21世紀の新たな石油」とも呼ばれるデジタルデータ

江東区が25年12月に策定した、大規模なデータセンターを建設する事業者に向けた指導要綱を通じて、はじめて敷地内に120万リットルもの重油が備蓄されることが明らかになった。これは、オリンピックプールのほぼ半分を満たす量だ。

インフラであるデータセンターを非常時にも稼働させるために必要な措置だと事業者側は説明するが、「非常用発電機は騒音規制の対象外なので、実際に災害が発生した際、住民の助けを求める聞こえなくなる声が聞こえなくなるリスクがある」(A氏)。

2月中旬、実際に説明会に足を運んでみたが、入口に「マスコミの方の入室は、お断りいたします」と書かれた紙が貼られるなど、物々しい雰囲気に包まれていた。両者の主張は未だに平行線を辿っており、着工予定の7月までもう半年を切った。

データセンターと住民の軋轢は江東区だけの問題ではない。日野自動車の工場跡地で計画されているデータセンターでは、住民らが市に対し、審査請求を実施。開発許可の撤回を求めていくとしている。印西市でも、駅前の一等地がデータセンターとして利用されることを巡り摩擦が起きている。

「寝耳に水だ」江東区住宅街に巨大データセンター…重油120万L貯蔵、”21世紀の新たな石油”をめぐり住民と事業者が対立_3
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こうした事態を重く見た東京都は2月に入り、データセンター建設のためのガイドラインを策定すると明らかにした。事業者に対し、住民になにをいつまでに説明するのかといった情報を目安として示すよう求める。

小池百合子知事は都議会の施政方針演説で「認定制度とガイドライン、(立地に関する)情報を早い段階で把握する都独自の仕組みを三位一体で運用する」と述べた。

もっとも、ガイドラインはあくまで「指導」や「助言」であり、義務化までは踏み込まない。もともと小池知事は東京が国際競争を勝ち抜くためにはデータセンターは必要不可欠だと主張している。あくまで、摩擦を抑える「ガス抜き」として利用される可能性が高い。

電子情報技術産業協会(JEITA)によると、国内のデータセンターサービスの市場は2030年に5兆6540億円と、25年から3割増加。年5.4%のペースで拡大を続けるとしており、少子高齢化が進む日本経済の中では数少ない成長分野でもある。

三井不動産や三菱地所、ヒューリックといった不動産デベロッパーも相次ぎ参入を表明しており、立地によってはマンションを建てるよりもデータセンターを建てるほうが収益を見込みやすくなっている。

1994年に公開されたアニメ映画「平成狸合戦ぽんぽこ」では、人間の住む場所を確保する乱開発に狸たちが巻き込まれる様子が描かれた。

翻って、30年以上経った令和の日本社会。マンション価格が高騰し都内でも人が住めなくなる一方、「21世紀の新たな石油」とも呼ばれるデジタルデータが次々と一等地を押さえ、人間が外へと押し出されるという光景も十分に有り得そうだ。

文/築地コンフィデンシャル