なぜ江東区はデータセンターの適地?

もっとも、住民の願いと経済合理性は別の話だ。まず、このエリアは「準工業地域」に属する。「住居専用地域」と異なり、オフィスや物流施設、軽工業であれば工場の建設も可能だ。つまり法律上、データセンターの建設を止めることはできない。

また、住民にとって不幸だったのが、データセンター建設予定地が借地であることだ。登記簿の情報によると、この土地は中堅ゼネコンが保有している。

「仮に借地でなければ、1億円を超えるような分譲マンションとして事業が成立する可能性は十分にあったのでは」と大手不動産デベロッパーで勤務するBさんは分析する。

しかし、将来の解体を前提とした定期借地権付のマンションであれば、話は別だ。販売価格が限られるため、建築コストの上昇を吸収できない可能性があるとして、二の足を踏むのは当然だという。

※画像はイメージです
※画像はイメージです

一方、今回計画されているのは金融機関やIT企業などを顧客とした、都市型データセンターだ。規模や電力の安さが優先される郊外型のデータセンターと比べ、遅延を小さくするために物理的な距離の近さが求められる。

皮肉にも、千代田区や中央区といった大企業の集積地に距離的に近い江東区は適地となるのだ。さらに、都市型データセンターは期限を定めて投資額を回収するビジネスモデルのため、借地と相性が良い。

A氏たち近隣住民は「データセンターのように周辺住民に負担を強いる施設であれば、丁寧に説明を尽くすべきだ」と主張する。しかし、事業者側は木で鼻をくくるような対応に終始した。

マンションの理事会に案内があったのは24年12月。25年2月から任意の説明会が始まったが、登壇したのは代理人で、口調こそ丁寧なものの、淡々と事業方針を説明するだけで、住民側の疑問に対しては最低限の説明で済ませようという態度だという。

A氏たちは行政や議員も巻き込み、詳細な説明を要求したが、誠意がある回答は得られなかったという。