最強国にくっついてナンバー2として威張るのではなく自立した思考に基づいて、自分たちの未来を自分たちで考えて決める

 私もそう感じますよ。これは先日の川満彰さん(沖縄戦研究者)との対談でも言ったんですが、日本の近代というのは、最初、日英同盟から始まった。

当時の世界で一番強い国と組んだ。その後イギリスが落ち目になってドイツが台頭してくると、ドイツと組んで日独伊三国同盟をやった。

でもドイツは一番強くなかったので失敗した。すると今度は第二次大戦後一番強い国となったアメリカと手を組む。

つまり「いつも一番強い国と手を組んで、その国がどんなにひどいことをやっても黙ってついていく」と。そういう意識が近代以来の日本のあり方に、ずっとあるんじゃないか。

さらに歴史を遡ると、実は天皇という称号自体、「中国に皇帝がいるから、その次になりたい」という。

それまでは中国の皇帝の下に各国の国王がいた。日本にしても朝鮮にしても、各地に。「でも、自分は皇帝に次ぐ地位に就きたい、他の国王より上になりたい」と思って、それで天皇という称号を作った。皇帝を名のると中国に怒られるので天皇を名のって、朝鮮とか他の国王よりは上だ、という。

そういう意味で、日本のメンタリティーというのは「一番強い者にくっついて、ナンバー2であることによって、自分が権威ある存在であるかのように示したい」という。それがいまだに継続しているんじゃないかと思えます。

でも私たちは、もっと自立すべきではないでしょうか? 

「自分たちの正当性は自分たちの中から生まれる」それが民主主義だと思うんです。つまり「人々の生命や人権を一番大事にするような国家、それを自ら作っていく」というところに価値を置いて、正当性を見出していくこと。そういうふうに転換しないといけないだろうと思います。

そのためには、すぐに今の仕組みを全部ガラッと変えるのは無理でも、少なくとも、この日本という土地に住んでいる人々の生命や安全、幸福、人権を大事にして、それに基づいて、アメリカのような強い国に対しても、きちんと言うべきことは言うような日本社会に変えていく必要があるんじゃないかと。

なかなか厄介だし、簡単には解決できない問題ですが、そういう自立した思考に基づいて、自分たちの未来を自分たちで考えて決めるという、当たり前のことを、とにかく地道にやるしかないだろうと思います。

写真/Shutterstock
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トランプが「アメリカ第一主義」をあらわにした今こそチャンス

布施 私が今、ひとつのチャンスだと思っていることがあります。これまでアメリカに対して、日本人は幻想があったわけですよね。「いざというときアメリカは守ってくれるんじゃないか」と。

でも、今、第二次トランプ政権になって、そんな甘い話じゃなく「アメリカは徹頭徹尾アメリカの利益第一で行動する」ということがハッキリしてきた。

それで最近、朝日新聞が発表した世論調査結果でも、アメリカの意向に何でも従うのではなく「なるべく自立したほうがよい」と答えた人が68パーセントいたんですね。「もうアメリカには頼れない、日本は自立した外交を考えるべきだ」という人が多数になった(*2)。

このチャンスを生かして、アメリカにひたすらついていくのではなく、自立した思考に基づいて、自分たちの未来を自分たちで決める当たり前の独立国に脱皮したいですね。

それが沖縄や日本を再び戦場にしないために絶対に必要だし、今それをやらなければこの国の未来はないんじゃないかと強く思っています。

*2 2025年4月27日の朝日新聞デジタルに掲載された全国世論調査結果で、日本の外交について、米国の意向に「なるべく従ったほうがよい」という回答は24パーセント、「なるべく自立したほうがよい」という意見が68パーセントだった。「いざという場合」に米国が本気で日本を守ってくれると思うか? という質問に「守ってくれる」との回答は15パーセント、「そうは思わない」が77パーセント。

構成=稲垣收

沖縄戦 なぜ20万人が犠牲になったのか
林 博史
沖縄戦 なぜ20万人が犠牲になったのか
2025年4月17日発売
1,243円(税込)
新書判/352ページ
ISBN: 978-4-08-721360-7

県民の4人に1人が犠牲になった沖縄戦から80年。膨大な史料と最新の知見で編み上げた沖縄戦史の決定版!

1945年3月末から約3か月間にわたり、米軍と激しい地上戦が繰り広げられた沖縄戦。
軍民あわせ約20万人もの命が失われた。戦後、日本は平和憲法を制定したが、沖縄は米軍の軍事支配に委ねられ、日本に返還後、今なお多くの米軍基地が存在している。
また、近隣国を仮想敵とし、全国で自衛隊基地の強靭化や南西諸島へのミサイル配備といった、戦争準備が進行中である。
狭い国土の日本が戦場になるとどうなるのか? 80年前の悲劇から学び、その教訓を未来に生かすために、国土防衛戦の実相を第一人者が膨大な史料と最新の知見を駆使し編み上げた、沖縄戦史の決定版。

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従属の代償 日米軍事一体化の真実
布施祐仁
従属の代償 日米軍事一体化の真実
2024年09月19日
1,078円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4065325308

「安全保障を専門とするジャーナリストとして20年以上活動してきた中で、
今ほど戦争の危機を感じる時はありません。」

日本がいつの間にか米国のミサイル基地になっていた……政府の巧妙な「ウソ」を気鋭のジャーナリストが見破る!現代人必読の安全保障論。

「いま、人知れず大変な事態が進行している。米軍が日本全土に対中戦争を想定した、核を搭載可能なミサイルを配備しようとしているのだ! しかも今後、日米の軍事一体化が「核共有」まで進めば、米軍は密約により、その核ミサイルを自衛隊に発射させることも可能になる。この未曾有の難局に、私たち日本人はいったいどう対処すればよいのか? 第一人者布施祐仁による驚愕のレポートと提言に、ぜひ耳を傾けてほしい」
――矢部宏治氏(『知ってはいけない』)

「布施祐仁は、戦後日本の対米従属の戦慄すべき帰結を容赦なく暴き出している。世界の火薬庫と化しつつある東アジアで、我々は戦争屋のお先棒担ぎになるのか、それとも平和の架け橋となるのか、決断の時はいまである」
――白井聡氏(『永続敗戦論』)

● 「台湾有事」をシミュレーション 日本への影響は?
● 日本にミサイルが配備される可能性
● 自衛隊が「米軍の一部」に…「非対称」な軍事関係
● 広がる米中間の溝 核軍拡競争の時代に逆戻りか
● 政府による巧妙な嘘…「核持ち込み密約」の真実
● 「日本有事」を防ぐために――日本がとるべきミサイル・核政策とは?

「戦後安全保障政策の大転換」
その正体は、終わりなき軍備拡張と米国への従属だった――
現代を「新しい戦前」にしないために

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