沖縄が再度“要塞化”されつつある今こそ、沖縄戦について知ってほしい

川満 この『沖縄戦』は本当にすばらしい本だなとつくづく実感しています。林先生が2001年に出された『沖縄戦と民衆』(大月書店)は2002年に伊波普猷 ( いはふゆう ) 賞(*1)を受賞されましたが、あの本はいまだに私たち沖縄戦研究者にとってバイブル的な扱いなんです。

今回のこの本はそれをさらにブラッシュアップし、2001年からこれまでの間に蓄積された資料を追加して書かれていますね。本の帯に「膨大な史料と最新の知見で編み上げた沖縄戦史の決定版!」とありますが、まさにその通り。これから沖縄戦を学んだり研究したりする人や、今学んでいる人たちにとっても、新たなバイブル的存在になるだろうと思います。

*1:沖縄研究の父と言われる伊波普猷の業績を顕彰し、沖縄タイムス社が創刊25周年を記念して1973年に創設した賞

『沖縄戦 なぜ20万人が犠牲になったのか』
『沖縄戦 なぜ20万人が犠牲になったのか』
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私は今、沖縄戦について、より多くの人たちに知らせたい時期だと本当に思っています。沖縄は新たに“要塞化”されつつある。自衛隊の南西諸島への配備(*2)が着々と進んでいるのです。そして、住民の避難計画を国と当事者である各自治体の首長が率先して行っている。これはまさしく沖縄戦をほうふつさせるものです。

戦争はいったん始まってしまったら、もう止めることができませんから、そういったことを問題視しないといけない。だからこそ今、沖縄戦について知り、語ることが非常に必要なのです。

あと一点は、最近の中谷防衛大臣の発言(*3)です。中谷大臣は、沖縄戦で総司令官だった牛島満の辞世の句を、「あれは平和を願う辞世の句だ」などという本当に訳の分からない解釈をしました。こういう行為は戦争を正当化する言葉につなげられていきます。ですから、「あの辞世の句は何だったのか?」ということも含め、今こそ改めて沖縄戦を学ぶ必要があるのです。この本はそれに最適な本だと思います。

*2:米中対立が進む中、2000年代以降、政府は抑止力強化のための「南西シフト」を掲げ、2010年に那覇駐屯地を拠点とする陸自第1混成団を第15旅団に増強。日本最西端の与那国島には2016年に沖縄本島以外で初の陸自部隊を配置。奄美大島、宮古島、石垣島にも基地を新設。ミサイル配備も進めている。

*3:沖縄戦を指揮した第32軍牛島満司令官は、米軍の攻撃を受けて首里城地下司令部から南部へ撤退、持久戦に持ち込もうとして、多くの兵士および民間人の犠牲者を出した。彼は1945年6月23日に自決する直前、「秋待たで 枯れ行く島の 青草は 皇国の春に 甦らなむ」という辞世の句を詠んだが、この句が陸自第15旅団(那覇駐屯)のホームページに掲載されており、「皇軍を美化するものだ」「沖縄戦の犠牲者に対する配慮がない」等の批判を浴び一時取り下げられたが、ホームページのリニューアルに際し再掲された(現在の掲載の表記は「秋を待たで 枯れゆく島の青草は 御国の春に よみがえらなむ」)。これに対し、中谷元・防衛大臣は「先の大戦において犠牲になった方々に心からの哀悼の意を表して、その教訓を活かしてこれからの平和をしっかりと願うという歌と受け取っております」と発言し、陸自のホームページから削除しない方針を示した。