アルゴリズムの発達が起こした「奇跡」

クラウド資本(注:インターネットの登場によって生まれた新しい形の資本)の時代を切り開いた技術者たちは、好奇心と倫理的とも言えるような情熱に動かされ、さまざまな技術を実験した。目的は、インターネットの核にある日々蓄積され続ける莫大なデータから、意味のある情報を取り出して解放することだ。

私たちが好みそうなウェブサイトや友達、仕事仲間、書籍や映画、音楽へと私たちを導くために、彼らは検索パターンや好みが同じような傾向を持つインターネット・ユーザーをクラスタに分類できるアルゴリズムを作った。

すると突然ブレイクスルーが起きた。アルゴリズムが受け身であることをやめたのだ。そして、それまでは人間にしかできなかった仕方で振る舞うようになった。つまり、アルゴリズムは行為者になったのだ。

アルゴリズムはすでに受け身ではなく行為者?
アルゴリズムはすでに受け身ではなく行為者?
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この奇跡が起きるまでには三度の飛躍が必要だった。最初は、単純なアルゴリズムから行動の結果に照らし合わせて目的を調整できるアルゴリズムへの飛躍、言い換えると、自律的にプログラムを修正できる(つまり機械学習の)アルゴリズムへの飛躍だ。

次の飛躍は、標準的なコンピュータのハードウェアが、それまでにない「ニューラル・ネットワーク」に置き換えられたことだ。最後の決定的な飛躍では、ニューラル・ネットワークに「強化学習」が可能なアルゴリズムが組み入れられた。

この三度の飛躍について、ひとつずつ説明させてほしい。