ブラックボックス化した組織風土──ダイハツ工業

大企業のなかにはパナソニックやソニーのように、カリスマ的な企業家がつくった組織が成長し、巨大企業として今日にいたるまで存在し続けているケースが少なくない。

いっぽう、創業者の影は薄く、いわば内発的に強固な組織が形成され、独り歩きしているケースもある。それが官僚制組織である。

官僚制はもともと官庁の組織だが、民間企業や政治の世界でも同様のメカニズムで発達し、局面が変わると、こんどは内発的すなわち内側からのほころびによって組織崩壊の危機に立たされる場合がある。

その1つが、2023年4月に発覚した自動車メーカー、ダイハツ工業の認証試験不正問題である。

写真/Shutterstock
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同社では同年4月に4車種で認証不正があったことを公表し、社内調査の結果さらに2車種についても不正があったことを5月に公表した。

同年12月に提出された第三者委員会の報告書によると、4月、5月に公表された件以外にも、衝突時のエアバッグ作動をエアバッグのセンサーではなくタイマー着火させる方法で試験実施したり、試験成績書の燃料注入量欄に試験データとは異なる虚偽の情報を記載して認証申請を行ったりするなど、新たに64車種・計25試験項目、174件に及ぶ不正を行っていたことが明らかになった。

1907年に内燃機関の国産化を目指して設立されたダイハツ工業は、軽自動車の販売台数では2022年まで17年連続で首位の座を維持した、日本を代表する軽自動車メーカーである。

なお同社は2016年からトヨタ自動車の完全子会社になっている。そのダイハツ工業で大規模な不正が行われていたのだ。