犯人は〈人〉でなく制度?
一般に官僚制組織の特徴としては、階層が多く、階層間では権限の序列が明確なこと、仕事はルールにもとづいて行われること、部署によって役割が明確に分けられていることなどがあげられる。
経営層と現場との意思疎通が不足しやすいし、現場の実情よりも、上で決められた目標やスケジュールが優先されがちになる。
官僚制型特有の加圧者の存在にも触れておかなければならない。
(旧ジャニーズ事務所などの)絶対君主型では、圧倒的な存在感を示すトップに対する管理職の個人崇拝や恐怖が部下に圧力をかけるのに対し、官僚制型では在任中に業績を落とし評判を下げないことに執心するトップと、上司に忠実で制度や目標を最優先する多数のビューロクラット(官僚)が、部下に強い圧力をかける。
組織の階層をまたぐ圧力の連鎖だ。実際に少なからぬ不祥事において、ビューロクラットの存在が見え隠れする。しかも組織の内外を隔てる厚い壁が内部を見えにくくし、不正の温床になることもある。
もともと合理性を追求する官僚制組織には、仕事の正確性や公平性といった利点があるが、ダイハツ工業の不祥事にはその弱点、すなわち「影」の面が色濃く表れているといえよう。
もっとも、それはダイハツ工業の特殊な体質だとは言いがたい。事実、今回の問題を受けて国土交通省が2024年に実施した調査では、トヨタ、ヤマハ、マツダ、ホンダなど国内の主要メーカーから、車やバイクの性能試験で不正があったと報告されている。
自動車業界ではこれまでにも、大手メーカーがデータの改竄や不適切な測定などの不祥事を繰り返してきたが、原因となった組織の問題点は驚くほど似ている。