「一流」の組織ほど内向きになる理由
ところで不祥事を起こしてマスコミで報道され、世間を騒がせる組織の多くには、共通点がある。
それは視聴者の関心を引き、批判の目が集まるくらい有名な組織、あるいは世間でエリートと目されるような人たちの集団だという点である。そこに不祥事を見過ごすリスクが隠れている。
一般に一流企業や独占状態にある組織は、給与面その他の待遇がよく、安定していてつぶれる心配がない。ちなみにダイハツ、東芝、旧ジャニーズなどの組織でさえ、その大半が大きな不祥事を起こした後も何らかの形で生き残っており、組織のメンバーが職を失い生活に窮しているといった話は聞かれない。
さらにメンバーがその組織の一員であることを誇れるようなブランドバリューもある(不祥事が明るみに出るまでは)。
要するに世間一般と比べると、待遇や名声に格段の開きがあるのだ。いわゆる組織の「内外格差」が大きいためメンバーにとっては組織を去ることの損失が大きく、よほどのことがないかぎり組織に留まり、上司や周囲の期待に応えようとする。
上司から無理な要求をされても受け入れてしまうし、多少の理不尽も堪え忍ぶ。
また、組織の不正や上司・同僚のパワハラに気づいても「見て見ぬふり」をする。
いずれにしても共同体のメンバーは既得権益を守ろうと特殊利益(その集団に属することによって得られる利益)にしがみつくため、内側から共同体を改革する動きはなかなか生まれない。
その意味では、番組への出演を拒否されることを恐れるテレビ局が、タレントや芸能事務所の不祥事追及に及び腰になったり、政権から情報をもらう大手マスコミの政権批判が鋭さを欠いたりするのも同じである。
もしかすると、それがテレビの地上波離れ、新聞の部数凋落といった長期のトレンドと関係しているのかもしれないが。