「高給優遇!空飛ぶタコ配便の巻」(ジャンプ・コミックス第64巻収録)

今回は、両さんが時給1万円という高給に惹かれ、タコスのデリバリーのアルバイトをはじめるお話をお届けする。

意気揚々と両さんが向かったバイト先は、ビルの高層階にあった。ファストフード系のデリバリーでは、拠点を建物の一階に置くことが多い。言うまでもなく、品物を持っての昇り降りに要する時間や手間を排するためだ。

だがこのタコスの店は、スクーターや自転車の代わりに羽根を身につけて、グライダーのように空中を滑空して移動する。そのため高所に施設を設けてあるのだ。

つまり、本作における両さんは、「やらかして(地方や僻地に)飛ばされる」のではなく、「高給目当てに空中を飛ぶ」のだ。しかし、高層ビル群によって発生した強力な乱気流「ビル風」によって、思わぬ方向に飛ばされることに!?

さて、装着者の体をフレームにして腕を広げた程度の面積の羽根で、バットマンのように、本当に滑空することができるのだろうか。

グライダーは、動力を持つ飛行機に比べてかなり大型の翼を持っている。前方に押し出す力、すなわち推進力を持たないため、空気中を移動する際に揚力(上方に押し上げる力)を抗力(進行方向と逆方向に働く力)に比してより大きくする必要があるためだ。

よって実際に人間が空中を滑空するには、2000年代以降に知られるようになった「ウイングスーツ」が不可欠だ。これは四肢間にムササビのように「膜」を張った形状の羽根とスーツとが一体となったツールで、腕や脚を動かしで羽根の形状や向きを変えることで、滑空のスピードと方向を制御できる。

ただしその機能は滑空に限られており、重力に逆らって上昇することは不可能だった。しかし近年では電動の推進器を備えた、上昇や加速が可能なスーツも登場している。

それでは、「ウイングスーツ」を使った高速宅配が普及するかというと……その可能性は低いだろう。推進器を持ったスーツは「航空機」と見なされる可能性が高く、非常に高価でもある。

現在、空中を移動してのデリバリーは、ドローンによって行われている。これは、2010年代に描かれた『こち亀』諸作でも描かれている。

「ドローンの時代の巻」(ジャンプ・コミックス第200巻収録)より。本作同様に、高層階の住宅への配達が描かれている。そこには抱腹絶倒もののギャグの代わりに、リアリティがある。ただしこのあと両さんは、高層住宅の修繕のためにドローンに載せられ、空中へ!?
「ドローンの時代の巻」(ジャンプ・コミックス第200巻収録)より。本作同様に、高層階の住宅への配達が描かれている。そこには抱腹絶倒もののギャグの代わりに、リアリティがある。ただしこのあと両さんは、高層住宅の修繕のためにドローンに載せられ、空中へ!?

それでは次のページから、両さんによる命がけの飛ばされエピソードをお楽しみください!!