決勝の常連たちが準決勝にもたどり着けず
「M-1グランプリ2025」は、準決勝に辿り着く前から“波乱”という言葉が軽く感じるほどの荒れ模様だった。決勝進出経験のある男性ブランコがまさかの2回戦敗退。常連のオズワルド、ちょんまげラーメン(旧・インディアンス)も準々決勝で姿を消した。昨年の決勝で爪痕を残したジョックロックもまた、準々決勝止まりだ。
ほかにも、からし蓮根、キュウ、くらげ、シシガシラ、ダンビラムーチョ、東京ホテイソン、もも、ゆにばーすといった決勝経験組が次々と脱落。さらに賞レース常連の金魚番長、家族チャーハン、ナイチンゲールダンス、ダブルヒガシまで、準決勝の壁に阻まれた。“準決勝に到達することも奇跡”とも思える大会の構造が、今年はより強烈に可視化されたと言える。
そんな激戦を勝ち抜いた31組が集結した12月4日の東京・NEW PIER HALL。例年以上に“誰が上がってもおかしくない”空気の濃度が高かった。ネタの方向性もキャラの温度も、漫才としての型も全く異なる“猛者”が並び、漫才界の新陳代謝のスピードがとんでもない場所まで来ていることを実感する。
特に印象的だったのは、常連組を押しのけて台頭してきたドンデコルテ、めぞん、たくろう、豪快キャプテンら新参勢の個性だ。設定の切り口が見たことのないものばかりで、観客に“全く新しい漫才体験”を与えてくる。準決勝という枠を越え、“漫才の更新”を目撃している感覚さえあった。
今年の準決勝では“9組の決勝進出者”を決める段階を超えて、「誰が優勝してもおかしくない」という大会史上まれに見る状況が生まれていた。決勝進出者の中には「9組には入るが優勝は難しい」タイプがいない。全員が爆発力を持ち、その日の会場の空気さえつかめば、そのまま頂点に届く可能性を秘めている。
また、敗者復活戦に回った組の中にも、準決勝の会場を揺らした“優勝級”のネタが複数あった。「今年は誰が勝つかわからない」この言葉が大袈裟ではなく、完全に事実としてそこにあった。













