Twitter(現:X)に愚痴ツイート
井田さんは、まずは“愚痴ツイート”から始めた。
「再婚のとき、別姓の親権者として子どもたちを育てましたが、名字が違っても家族としては何ら支障はありませんでした。
ただその期間ずっと親として、例えば習い事の引き落とし口座や大学の学費の保証人など、100以上の名義変更手続きが必要で、精神的にも肉体的にも苦痛を感じました。
こうした自分の経験をTwitter(現:X)に投稿し始めたのが、夫が入院した後からでした」
Twitterで呟き続けていくうちに、「私も同じ経験をしました」という当事者が集まってきた。
そこで2018年末に、選択的夫婦別姓の法改正を求める当事者団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」事務局を立ち上げる。
当時住んでいた中野区の区議会議員に陳情に行き、区議会議員から国会に意見書を提出してもらった。
夫婦同姓は『家制度』の名残り
井田さんは「夫婦同性」について学びを深めると、目から鱗の連続だった。
「古来、日本だけでなく、東アジアには結婚改姓の文化はありませんでした。しかし『家制度』制定と同時期に、ドイツから輸入したのが夫婦同姓だといわれています。
家の統率者に嫁いだ女性は改姓し、その家の戸籍に登録され、財産権も子の親権も、離婚を願い出る権利すら持てず、統率者家族の生活様式に従属することが強いられました。
『家制度』が廃止されて77年経ちますが、いまだに『結婚=女性が相手側の家に嫁ぐ=名字を変える』という図式を信じている人が少なくありません」
1947年に「家制度」は廃止され、結婚するときは親の戸籍からお互いが抜けて、1つの夫婦戸籍にする形式になった。憲法24条は「両性の平等」をうたっているが、「夫婦同姓」だけが残った。
厚生労働省による「人口動態統計」2022年調査によると、婚姻後に姓を変えるのは95%が女性。法務省「選択的夫婦別氏制度(選択的夫婦別姓制度)について」によると、「夫婦同姓」を義務付けている国は日本以外にない。
「生まれ持った性別によって、同じ選択肢を持って結婚に臨めないのは不平等だと思いませんか? しかも日本の場合は、法的に片側から名字を奪う構造が『女性が改姓するのが当たり前』という社会的圧力を生んでいます。
『愛する人の名字になることが私の幸せ』と思う人はそれを選択すればいい。でも、そうじゃない人もいます。
結婚制度に夫婦同姓の強制という不平等な縛りがある限り、望まない人まで個のアイデンティティを失うのです。
改姓する・しないすら自分で選べないなんて、ジェンダー平等と基本的人権の尊重に反していると思います」