父の死後に経験した相続地獄

私は昨年末に投与した抗がん剤が体にあわず、死の淵をさまよった。一命をとりとめ、体調もある程度回復した段階で思い浮かんだのは「資産整理をしなければいけない」ということだった。

資産整理については余命宣告を受ければもちろんのこと、年を重ねていく中で多くの人がたどりつく終活だと思うが、私がことさらに急がなくてはいけないと考えたのには事情があった。

亡き父の資産整理を経験していたからだ。

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死後の資産整理がどれほど大変な作業であるかは、やったことのある人でなければわからないだろう。ここではまず、私が体験した相続地獄の全貌を伝えることから始めたい。

父は2006年に脳出血で倒れて半身不随になった。

その後、自宅介護を経て施設に入所し、2年後の2011年に84歳で他界した。相続の手続きをしながら私は「この地獄のような日々は、あの時すでに始まっていたのだ」と思い起こしていた。

あの時とは2000年に母が他界した時のことだ。

母はピンピンコロリで旅立った。

3日前に両親がそろって私の自宅を訪ねてきて、みんなで一緒に食事をしたばかりだった。

「親の介護費用を親の金で支払うことで相続税を減らせ」森永卓郎が後世に伝える渾身の「死に支度」ドキュメント_2

だから父から母が総合病院へ運ばれたと連絡を受けた時は耳を疑ったが、私が職場から急いで駆けつけた時、母の息はすでになかった。