髙橋藍は「背負うものが大きくなりすぎた」

――髙橋藍選手はどのようにご覧になっていましたか?

表情は硬かったですね。プレーもどこか硬さが出てしまっていて、普段ならばブロックに当ててもっと飛ばせるボールが飛んでいかなかったり、飛んだ場所にレシーブがいてつながれてしまったり、なかなか思い通りの展開に持っていけなかった。

ディフェンス面は、ドイツ戦の時にはかなり硬さがあって、「大丈夫かな」と心配する場面もありましたが、試合を重ねるごとによくなった。特にアメリカ戦、イタリア戦のディフェンスは藍の力が存分に発揮されていたと思います」

悔しさが残ったパリ五輪 写真/shutterstock
悔しさが残ったパリ五輪 写真/shutterstock

――髙橋選手の硬さの理由は何だったと思いますか?

僕はかねてから「関田が長男、石川が次男、藍が三男」と言ってきましたが、彼は“三男坊”的なキャラクターというか、本来自由でやるべき人間だと思うんです。でも、兄たちが本調子じゃないことを感じ取り、背負うものが大きくなりすぎてしまった。もちろんこれからの日本代表を考えたら、背負うことはすごく大事で必要なんですけど、今大会はそれがプラスではなくネガティブに出てしまったところもあったのかな、と。

足首のケガの影響もあったと思うのですが、たとえばフェイクセットができる場面でもいかずに、確実さを求めて丁寧なトスを上げるシーンも多かった。もちろんそれも正解なんですけど、楽しむことを体現してきた選手なので、そこでも楽しむ余裕を持てていたら違ったのかもしれない。どの国も素晴らしい技術が結集して、逆境でも開き直りながら楽しめるチームが勝つ。そういう紙一重の戦いがオリンピックなんだと教えられました。

藍には「東山の生徒たちもみんなが応援していました」とLINEで連絡したら、「さらに強くなれるように、みんなのヒーローになれるように頑張ります」と返信がきました。真剣さの中で楽しむ余裕を持てばもっとすごい選手になるでしょうし、これからの日本代表を背負っていってほしいですね」