刑罰としての憲法9条

その心理を逆説的に照射するのが、幡新大実『憲法と自衛隊』である。1966年生まれの幡新は東京大学法学部を出て、1999年にイギリス・ランカスター大学で博士号を取得。2003年には英国法廷弁護士(インナー・テンプル)の資格も得た、日英両国の法制度に精通する異色の研究者である。前掲書において幡新は、憲法9条の「意味/性質」について3つの解釈の可能性を提示する。

その1:刑罰説。
その2:平和的生存権の担保説。
その3:良心的規範説。

ごく簡単に〝超訳〟すると、次のようになるだろう。

刑罰説:二度と連合国に逆らえないよう、日本を恒久的に弱体化させる目論見によるもの、という解釈。

平和的生存権の担保説:イギリス権利章典(1689年)の第6条「平時に、王国内で、議会の承認なく、常備軍を設置、保持することは違法である」と同様の規定と見做す解釈。

良心的規範説:〈二度と戦争は嫌だ。軍国日本を復活させたくない〉【5】と考えた当時の日本人たちの考えが反映されている、という木村晋介(説)と類似した解釈。基本的には、戦争は悪いことなので、その手段となりえる戦力を持たない、という良心の表明。