「薬は効かない。必要なのは我慢と根気、そして勉強です」 

――ホスト依存による「強迫的性行動症」は、どのように回復していくのでしょうか。

まずはホストとの関係性を断ち切り、お金を稼ぐために昼夜逆転してしまった生活を正します。就労支援を利用して昼間の仕事に就かせ、規則正しい生活習慣を取り戻すのです。

そして使えるお金を限定し、これまでの1万円が100円のように感じていたであろう、おかしくなった金銭感覚を元に戻していきます。さらに仕事を介して働く喜びや、自分が誰かのためになっているという感覚を得ることで、自己肯定感も上げていき、社会的な復帰を目指していきます。

――薬による治療などは行なわないのですね。

薬は効かないんですよ。発達障害の症状が強かったり、ODによって幻覚や幻聴が出ていたりする場合は処方することもありますが、一番は真っ当な暮らしや仕事をする中で、自分が一人前になったんだと思えること。そういう体験が必要なんです。

――とても時間がかかりますね。今グループホームで生活している方は、どのくらいの期間、入居しているのでしょうか。

1人は2年ほど生活していますね。治療にはとても時間がかかります。20代の子だったら、人生を書き換えるような大変な治療になるので、根気よく続けていくことが大切なんです。

グループホームの一室(撮影/集英社オンライン)
グループホームの一室(撮影/集英社オンライン)
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――今まさにホス狂の子どもを持つ親御さんは、どんな行動を取ればいいでしょうか。

必要なのは我慢と根気、そして勉強です。

まず当事者にホストを否定させ、縁を切るように言い聞かせようとしても無駄です。そうすると当事者は家出し、今度はホストが「同棲しよう」などと口説いて囲い込まれてしまいます。

この仕組みは、宗教団体などが当事者を洗脳し、家族や周辺の言葉を届かなくさせる手口と同じです。

こうなると深みにハマってしまうので、家族は当事者を否定せず、受け入れて待つ。ホストはお金を取るのが商売ですから、やがては必ずホストと当事者間に亀裂が入るときが訪れます。

そうして傷ついて家に帰ってきたときに、精神科でも治療で応用される「動機づけ面接」という、自発的に回復を促す話法で受け入れるのです。

――「動機づけ面接」とは?

対象の葛藤を明らかにし、自ら変化しようと働きかけるためにさまざまな話法を使ってアプローチする方法です。とはいえ「動機づけ面接」そのものは非常にテクニックのいる話法で精神科医でさえ何年もかかるほど。

その代わり「動機づけ面接」の簡易版とも言える話し方を教えるワークショップや講習会などは様々なクリニックなどでも行われていますので、それらに通い、家族も学んでいくことが大事です。

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非常に根深い問題である、「強迫的性行動症」によるホスト依存。大石先生は「のめりこんでしまう女性たちの支援や背景についても議論する必要がある」という。
#2では、かつてホストクラブに依存し、5000万円以上もの借金を抱えて「大石クリニック」の診察を受けたあと、現在グループホームで生活する女性(26)に話を聞いた。

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取材・文/集英社オンラインニュース班