「店グル」という悪魔のやり口

11月20日、相次ぐホストトラブルに岸田文雄首相は「ホストクラブへの立ち入り指導や相談対応の強化などの対策を行う」と宣言。27日には複数の大手ホストグループと都議会議員、新宿警察署による議論の場が設けられ、同日、露木康浩警察庁長官が歌舞伎町で異例の視察を行うなど、この問題に関する注目が集まっている。

しかし、こうした状況でも担当ホストに疑いもせず金を貢ぎ続ける“ホス狂”は少なくない。

明け方の歌舞伎町を歩くホストと女性客
明け方の歌舞伎町を歩くホストと女性客
すべての画像を見る

18歳のユキさん(仮名)は、その若さで月に85万円稼ぎながら、そのうちの50万円をホストに使っているという。

「高校を中退してガールズバーで働き始め、そこの店長にソープを紹介してもらいました。年齢? どちらも17歳のときですね。今はデリヘルと地方風俗への出稼ぎが収入源です」

なぜホストにハマるのか。太ももに複数の自傷行為の痕があるユキさんは言う。

「毎日LINEをくれて、自分のことを気にかけてくれるし、さびしいときに一緒にいてくれる唯一の人だからかな。以前、担当に『ひとりはヤダ。死にたい……』とLINEしたら、ウチまで駆けつけてくれました。ここまでしてくれるんだから、お金で返そうと。他の男はいついなくなるかわからないけど、ホストはお金さえ払えばずっと一緒にいてくれますから」

ユキさんと担当ホストのLINEのやりとり。担当ホストからは「逮捕される時は一緒」「死ぬ時は一緒」との言葉も
ユキさんと担当ホストのLINEのやりとり。担当ホストからは「逮捕される時は一緒」「死ぬ時は一緒」との言葉も

若い女性たちをここまで入れ込ませるのには、テクニックがあるという。元ホストで現在はスカウト業も兼ねたバーを経営するSさんがやっていた手口はこうだ。

「ホスト時代、僕がヘルプ(担当ホストが指名客につく前や離席中、代わりに接客するホスト)として前座的に姫(客)の席につくときは『今日の〇〇さん(担当ホスト)、機嫌が悪いっぽいよ』と言っておくんです。

そうすると、後から担当がその席について『狙い撃ち(高額オーダー)できる?』と頼まれた姫は、担当の機嫌を損ねたくないから断りづらくなる。こうやって店がグルになって、姫に高額支払いをさせるように仕向ける『店グル』は常套手段でした」

営業時間中も従業員同士はグループLINEで店内の様子や初回客への指示を出し合っている。店グルのやり取りが行われることも
営業時間中も従業員同士はグループLINEで店内の様子や初回客への指示を出し合っている。店グルのやり取りが行われることも

他にも「あの子は〇万円のお酒を入れてたよ」と言って、客同士の競争心をあおったり、ある客を“担当の本命の彼女”という設定にしてホスト同士が話を合わすこともテクニックのひとつだという。

このようなアシストで店の売上に貢献し、 “ヘルプの神”と呼ばれていたSさん。現在は経営するバーでもまたホストとグルになっているという。

「このバーは、女性客が担当の出勤待ちで利用する場所でもあるんです。そんな客には『今月、〇〇さん(担当ホスト)の売上厳しいみたい』とか言っておけば、ホス狂は担当を支えてあげたいという気持ちになる。彼女たちはホスクラ以外の人間関係が希薄だから、僕みたいな第三者の言葉が心に残るみたいで」