鳥取県は撮り鉄との共存共栄を目指す
このように撮り鉄に憤慨している地元民は多いが、一方で「それでも昔に比べたらだいぶマシになった」と話すのは前述の30代ベテラン撮り鉄だ。
「過去には水面が反射した鉄道写真を撮るために勝手に田んぼに水を張って大問題になったこともありましたし、撮影を妨げる人に対して『どけよ!』『消えろ!』といった罵声を浴びせる“罵声大会”が発生することも珍しくなかった。
3年前に撮り鉄が狙う江ノ電(江ノ島電鉄)の前を自転車で通った外国人の男性が、撮り鉄たちから罵声を浴びせられる動画が出回り大炎上したのも記憶に新しいです。
実際に私も農作業をしている農家の人に『失せろ!』と暴言を吐きまくってる撮り鉄を見たこともありますし……」
しかし、今回、騒動の舞台となっている鳥取県は「鳥鐵(撮り鉄)の地・とっとり」と打ち出すなど、鳥取県は鉄道を重要な観光資源としており、撮り鉄との共存を目指している側面もあるという。
やくもの撮影スポットが点在する場所に位置するビジネスホテルで働く60代の女性従業員は「最近はやくものおかげで売れゆきがいい」と話す。
「桜が咲き始めた頃から予約で満室になることが増えました。周りの同業さんも“撮り鉄バブル”で潤ってるんじゃないでしょうか。
うちに泊まりにくる方はみんないい子だし、『こんなの撮れたんですよ!』とうれしそうにやくもの写真を見せてくれたり、山桜が見えるスポットを案内したら、すごく喜んでくれてまた泊まりに来てくれた方もいました。一部の人たちの行動のせいで撮り鉄全体のイメージが下がってしまうのは残念ですよね……」
鳥取県では今後も多くの撮り鉄が訪れることが予想されるため、沿線自治体と協力しておよそ300台の駐車場を設けるなど対策を強化している。だが、前出の30代ベテラン撮り鉄男性は「6月15日の旧型やくもの引退日が近づくにつれて、撮り鉄たちのマナーは悪くなっていくのではないか」と警鐘を鳴らす。
「引退する車両の姿をカメラに収めようとする、いわゆる『葬式鉄』と呼ばれる人たちはにわかでマナーをわきまえていない人が多いので、確実にトラブルは増えていくはず。
撮った電車をもう一度撮るために、車で電車を追い抜いて次の撮影スポットに向かう『暴走鉄』も出てきます。そうなると事故が起きて、けが人が出る可能性だって十分にあると思いますよ」
平井鳥取県知事は11日の記者会見にて、「『やみくも』ではなく『やくも』を楽しんで」と得意のダジャレで注意喚起を行なった。
果たしてこの言葉が撮り鉄の耳に届くのか。それとも同じ轍を踏んでしまうのか。「やくも」引退まであと2ヶ月を切っている。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班