津波注意報発令中に、津波の危険が最も高い場所で…

7月28日夜に設定された記者会見は当初、31日午後8時から高台にある伊東市役所8階の大会議室で行なわれる予定だった。

「7月中」の辞職の意志を明言していた田久保市長がこれをひっくり返す方針を口にするタイミングとして月の最後の日の夜を選んだとみられるが、市長が去就を明らかにする公共性が高い重要な場だけに、市が主体的に市役所で会見を行なうべきだった。

「実は田久保市長は、後に全部反故にすることになる辞職などの3つの約束を口にした7月7日の記者会見を伊東港の一角にある“伊東市観光会館”で行ないました。

この時の会見の主催者は田久保市長の後援会で、地元記者クラブ加盟社以外は入れない、と通告してきたんです。しかし今回は市役所での開催なので市の事業として行なわれるとみられていました」(地元記者)

7月31日、記者会見する田久保眞紀市長(撮影/集英社オンライン)
7月31日、記者会見する田久保眞紀市長(撮影/集英社オンライン)
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ところが会見前日の30日夜、会見場所を観光会館に変更するとの通告が地元記者クラブ加盟13社に届き、クラブはこれを受け入れ、観光会館での開催が決まった。この変更は非常時に、異常な形で決められていた。

「30日朝にカムチャツカ半島付近で起きた巨大地震で伊東の沿岸には津波警報が発令され、午前9時40分には津波浸水想定区域に住む世帯に避難指示が出ています。実際に伊東にも20センチの津波が到達し、幸い浸水被害はなかったもののJR東日本の伊東線の全線が停まるなど大きな混乱が起きました。

静岡県は生命や身体に危害を受ける恐れがあるとして伊東市にも避難所設置費用を国と県で負担する災害救助法を適用しています」(地元記者)

伊東市観光会館のそばに置かれている津波避難救命艇(撮影/集英社オンライン)
伊東市観光会館のそばに置かれている津波避難救命艇(撮影/集英社オンライン)

30日午後8時45分、全国の他の地域とともに伊東の津波警報は津波注意報に変わる。海辺の観光会館への会見場所通告があったのはその直後だと地元メディア関係者は証言する。

観光会館は岸壁から20メートルほどしか離れておらず玄関付近の海抜は4.2m。玄関の前には避難経路を示す看板があるが、津波浸水想定区域外に逃げるまで最短で600m移動しなければならない。

目の前の岸壁のそばには、陸の奥への避難が間に合わない人が逃げ込むための「津波避難救命艇」が置かれている。要するに津波の危険が最も高い場所にある。