交際相手に送りつけられた藁人形

医学部の学生の佐々木悠馬(22歳)は、最近、知り合った年上の看護師と交際していたのだが、交際相手宛に「呪ってやる」と書かれた手紙や五寸釘が刺された藁人形が送り付けられるなど、誰からか見当もつかない嫌がらせが続いていた。

「ずっとしてるんです。ちょうどあの子が、声変わりしたくらいから……」14歳から息子と性行為をし続けた母の告白…息子の彼女に藁人形を送りつけて_1
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悠馬が、弁護士を通じて探偵に調査を依頼すると、なんと、加害者は悠馬の母親だったことが判明した。

「示談交渉は弁護士に進めてもらっていますが、加害者になった母親のケアを阿部先生にお願いできないかと思いまして……。母も阿部先生に相談したいっていうので」

悠馬は弁護士を介して相談に繋がっていた。

私は悠馬から事情を聴くと、すぐに関西地方に暮らす悠馬の母・恵理子(42歳)を訪ねた。犯行態様の陰湿さから、恵理子にとても怖い印象を持っていたが、目の前に現れた恵理子は意外にも穏やかで、華奢で物腰の柔らかい少女のような女性だった。

「この度は本当に申し訳ございません。私ったら本当に恥ずかしいことをしてしまって……。あの子の人生、傷つけてしまったんじゃないかって、毎日、後悔してるんです……。でも、こんなこと、誰にも相談できなくて……」

恵理子は泣きながらそう語った。

交際相手の何が気に入らなかったのか。

「相手の方のことは全く存じ上げません。お恥ずかしいのですが、誰であれ、悠馬をとられてしまうのが、怖くて仕方なかったんです……。どうか、助けて下さい……」

悠馬は恵理子にとって、自慢のひとり息子だった。恵理子の夫も医師であり、恵理子は短大卒業後、すぐに夫と見合い結婚をし、20歳で悠馬を出産した。

恵理子の実家では、女子に大学進学は許されず、20歳までには実家を離れなければならなかった。

結婚は早ければ早いほど良いと考えていた恵理子にとって、6歳年上の医師との見合いは悪い話ではなかった。

「息子を医者にするのが僕の夢です。恵理子さんお願いします」

これが夫からのプロポーズの言葉だった。

そしてふたりは入籍するや否や、早速、子作りをスタートさせた。

「朝と夜と、1日2回。仕事がない日は1日中、ベッドにいることもありました」

恵理子は、情熱的な夫との生活に心身ともに満足していた。そして、1か月後に生理が遅れ、妊娠が判明した。夫は大喜びし、恵理子の身体に負担をかけないよう、早めに帰宅し、家事をしてくれていた。この頃の夫は、恵理子にとってこの上ない理想の夫だった。しかし、そうした甘い結婚生活は長くは続かなかった。

待望の男の子が生まれると、あれだけ激しかった夜の生活は、ぱったりと途絶えてしまった。

「悠馬も兄弟がいたら楽しいんじゃないかって、誘ったこともあったのですが、夫もひとりっ子だし、女の子だったらいらない、女が生まれたら面倒は見ないって言われてしまって……」

それでも夫は悠馬のために早く帰宅し、一緒にお風呂に入ったり、遊んだりする子煩悩で良い父親だった。学校の行事にも仕事を休んで参加し、毎年、家族3人で海外旅行をするなど、家庭的な夫ではあった。しかし、恵理子とのセックスは頑なに拒んだ。寝室は別々にしたいと言われ、夫は部屋に鍵までかけるようになってしまった。

夜、恵理子が起きると、よく夫の部屋から女性の喘ぎ声が聞こえてきた。おそらく夫はAVを見ながら、ひとりで性欲を処理していたのだろう。

「傍から見れば幸せな家族に思われたかもしれませんが、女としては寂しい人生です」