岸田首相は国民負担率の高さを知らない?
実質賃金が前年比1.3%減少し、1年11か月連続で前年割れしていることを危惧しているのか、岸田文雄首相は3月28日に自身のXに物価高を乗り越える2つの約束として、「今年、物価上昇を上回る所得を必ず実現」「来年以降に、物価上昇を上回る賃上げを必ず定着」と投稿した。この2つの約束は本当に所得増につながるのだろうか。
まず、最初に「今年、物価上昇を上回る所得を必ず実現」と掲げたものの、国民所得に占める税と社会保障負担の比率を示す“国民負担率”は、現在45.1%。頑張って働いても約半分の稼ぎを政府に奪われており、物価上昇を下回る所得になっている原因は政府の政策にあるように感じる。岸田首相はそういった現状を把握していると思うかについて、藤井氏は「把握していないと思います」と答えた。
「2023年10月からは免税事業者から消費税を支払うように誘導する“インボイス制度”が、多くの国民の反対の声にも耳を貸さず、施行されました。他にも、『森林を整備するため』という名目で2024年4月から年間1000円を徴収される“森林環境税”も始まっています。『政府が国民の所得を奪っている』という認識を持っていれば、所得増を約束しながらこういった増税策を推進するとは思えません」
給与が増えたとしても、その分増税されてしまえば、当然ながら所得は増えない。岸田首相の矛盾した発言を鑑みると、岸田内閣では国民の所得が増える見込みがいかに低いのかがうかがえる。
「賃上げのために何が政府として必要なのか」
岸田首相のX投稿には「来年以降に、物価上昇を上回る賃上げを必ず定着」とも記されていた。しかし、賃上げは企業が判断することであって首相に決定権はない。岸田首相はそのことを理解しているのかについて、「さすがに『理解していない』ということはないと思います」と藤井氏はいう。
「岸田首相の発言を好意的に解釈すれば、『十分な賃上げを各企業が判断したくなるような、活気ある良質なマクロ経済環境を創出します』と読めなくもない。しかし、『そういったマクロ経済環境とはいかなるものなのか?』ということは一切理解せずに発言したものと思います。
なぜなら、それを理解しているのであれば、減税や社会保険料引き下げ、内需拡大のための財政出動といったさまざまな経済政策を行なうはずだからです。ただ、そういった政策は行なっておらず、『賃上げのために何が政府として必要なのか』という具体策をまったく知らないままに発言したのだと断定できます」