2つの選挙は「自民の強さ」と「立憲の弱さ」を証明したのか?
世論調査の結果を見ると「自民党は依然として強い」というよりは、「野党第一党である立憲民主党が頼りない」という見方ができる。立憲は支持率5.3%となかなか二桁台に乗らない渋い状況が続いており、2023年12月に東京都で実施された江東区長選、武蔵野市長選では、いずれも立憲が推薦した候補者は自民党推薦の候補者に負けている。
とりわけ武蔵野市長選は昨年12月24日に行われ、裏金問題に伴う自民党バッシングがヒートアップ中で、立憲側からすれば、いわば“ボーナスステージ”だった。わずか339票差の接戦だったとはいえ、千載一遇のチャンスを逃したことを鑑みると、立憲の期待感の低さを感じずにはいられない。なぜ与党の問題が止まらないにもかかわらず立憲は支持を集められないのだろうか。
永田町で長年取材活動をしているジャーナリストの鈴木哲夫氏にその理由を聞いた。
まず江東区長選、武蔵野市長選での立憲の敗戦について、「東京都は小池百合子都知事の存在感が強い特殊な地域です。この2つの選挙結果から単純に『立憲が負けた』と決めつけてはいけません」と釘を刺す。
「江東区長選では与党の推薦を受けて元東京都政策担当部長の大久保朋果氏が出馬しましたが、都民ファーストの会も一緒に推薦しています。都ファは自民党の“天敵”だった小池知事が創設した政党であったのに、これまでは相容れなかった自民党と手を組むという異常事態が起きました。
都ファ所属の都議からその裏側を聞くと、江東区長選に向けて元都議擁立の準備などを進めていたようですが、幹部会で小池知事から『自公と一緒にやる』『大久保氏は都庁女性幹部として頑張って働いてきたいい候補であり、自公と手を組むくらい別にいいではないか』と突如言われたそうです。当然『自民党とは一線を画すべき』と反対の声もあったそうですが、知事の声は天の声。結局は与党と都ファが手を組む構図が決まりました」
江東区長選では“自民色”を消して“小池色”を前面に押し出して大久保氏が勝利した。ただ、武蔵野市長選では同様の動きは見られなかったが、鈴木氏は「都ファから候補者を出さずに“自公と野党がそれぞれ推薦する候補者の一騎打ち”という状況を作り、間接的に自公に協力しました」と語った。