決断できない「検討使」とまで揶揄された岸田総理

そもそも、今回の所得税減税(より詳しく言うと、所得税及び住民税の減税)、一人あたり4万円とはいっても、例えば4人家族の場合はどのように支払われるのか。また、所得税額が少ない人はどうするのか。このあたりは決まっていないどころか、検討すらされていなかったようで、与党内を含め混乱を招いている。

岸田総理は、「やりたい政策や理想の国家像がない」とたびたび非難されてきた。すなわち、政策を選択する基準を持ち合わせていないに等しいのではないか。

霞が関、特に財務省の言いなりで政策を決めているという。それも、財務省に政策の選択肢を用意してもらい、そこから選び(しかも特定の選択肢を選ぶことを誘導され)、決めているような流れとなっているようだ。要は決めているというより「決めさせられている」と言ったほうがいい状態なのだ。

岸田首相は「“増税メガネ”というより“増税パペット”」黒幕・財務省の次なる一手は「元財務事務次官」の全国行脚。減税はさらなる増税の下地つくりか…_1
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しかし当の岸田総理は、自分で決めている、俺は決断できる総理だ、という高揚感に浸っているらしく、その姿は、周りの与党議員からしても奇異に映っているという。実際、本会議場で所信表明演説に対する代表質問が行われている最中の岸田総理の表情を見たときの、不気味と評したくなるような笑みが忘れられない。

財務省の言いなりといえば、昨年末の防衛費増額の財源の議論が思い出される。党内でまだ国債とするか税とするかについて、結論に至っていないにも関わらず、岸田総理が「財源の一部は税による」と表明した。

そう振り付けたのは他でもない財務省であった。本来経るべき与党内の議論をすっ飛ばして、まるでコスパ思考に毒された若者のように、「総理の口から言わせれば手っ取り早い」とばかりに総理に表明させたのだ。しかしこれには党内の財務省の主張に理解のある議員からも反発の声が上がり、財務省の信用は急降下した。

国会の質疑における答弁では「検討します」を繰り返し、決断できない「検討使」とまで揶揄された岸田総理。財務省のお膳立てで決断したつもりになるようになったのは、この頃ころらであろうか。

岸田首相は「“増税メガネ”というより“増税パペット”」黒幕・財務省の次なる一手は「元財務事務次官」の全国行脚。減税はさらなる増税の下地つくりか…_2

さて、所得税減税に話を戻そう。減税と聞くと、「増税メガネ」とは正反対の決断のようだ。当初は岸田総理の思いつきという部分があったとしても、その規模や実施時期から考えると、財務省が納得する選択肢の中から選んだ(選ばされた)と考えたほうがいいように思う。

「減税なんてとんでもない。増税だ、増税だ!」の財務省がなぜ減税なのかといえば、減税の効果はないか、あるいは極めて限定的であるという結論に導くための、もっと言えば、「さらなる増税の下地」を作るための手段なのではないか。