母を母として見ない
小川さんは生まれ育った家で、今も両親と暮らしている。自分がひきこもりになったのは、親のせいだとしつつ、「ひきこもり続けていられるのは、親のおかげだと思っている」と感謝の言葉も口にする。
ここ1、2年は大学受験の勉強をするのが日課だ。「自分の経験を学問や社会に還元したい」との思いから、障害学や障害当事者文学を学んでみたいと考えているそうだ。
最近は、母親との関係も改善しつつあると話す。
「僕の病の実質は、父からではなく、間違いなく母から受け継いだ部分が多いだろうなと思ったので、思い切って母を母として見ないで、僕と同じような病を抱えた人だと思うようにしたんですね。
そんな風に客観的に見るようにしたら、割と母親とは仲良くなれたんです。たぶん母も努力をしているんじゃないかと思うんですよ。僕がひきこもり始めたときは、1週間に何回もヒステリーになったりしましたけど、今は1年に1回ぐらいですし。先日は一緒に伊豆大島に行きました。僕が海を見たいと言って。埼玉、海がないので(笑)」
そう言って控えめに笑う小川さん。今後は、ひきこもり当事者の「動けなさ」を広く知ってもらうため、編集者の力を借りて新たな本を作れないかと考えを巡らせている。ひきこもりとは縁のない人にも届くよう、祈るような気持ちで――。
取材・文/萩原絹代
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