CA風のメイクや立ち座りの所作などを披露したことも

「2023年3月いっぱいで『ニュースウォッチ9』を降板後すぐに『NHKニュース7』の金曜・日祝のサブキャスターに就任しました。知的でクールな印象ですが、『あさイチ』でブルゾンちえみと共演したときにはCA風のメイクや立ち座りの所作などを披露し、ノリのいい一面も披露。ほがらかな笑顔も多く見せる気さくさもあります」(同前)

そんな山内アナだからこそ“絶叫アナウンス”の声と緊迫した表情には迫力があった。その背景にはNHKの災害報道へのこんな方針があるからだという。

「NHKのアナウンス室は東日本大震災以降、災害時の呼びかけ内容を深く検証し改善してきたと言われています。ふだんは冷静沈着なアナウンサーが強く呼びかける手法は聞く側に有事を感じさせます」(同前)

NHKアナはどんな教育を受けてきたか。1963年にNHKに入局し女性初の「理事待遇エグゼクティブアナウンサー」を務め、2000年に定年退職し、それ以降もフリーアナとして精力的に活動する加賀美幸子氏に聞いた。

「私は1963年に入局以降は一貫して東京アナウンス室勤務でした。私が1980年から1985年に『NHKニュース7』のキャスターを勤めていた際もさまざまな緊急速報をしてきました。特に緊急速報時はディレクターが隣に座り、次から次へと飛び込んでくる新情報を焦ることなく静かに重く伝えるのです。有事において冷静さを欠くことなく的確に伝えるには、日頃からの読書はもちろん、言葉の基本を学ぶこと、日々の発声や朗読で自己研鑽を繰り返すことに他なりません」

加賀美幸子元アナ(NHKより)
加賀美幸子元アナ(NHKより)

今回の緊急地震速報のほとんど全てを聴いていたという加賀美さん。こんな感想も話した。

「多くのアナウンサーが状況説明をしていましたが、自分の目で見たことを、出過ぎず、足りなすぎず、胸に届く手法で的確に伝えていました。感情を抑えながら、しかし内容はしっかりと強く伝えることが基本ですが、大変なことの前では、伝える側の感情が見える瞬間、その人の思いが出ることもあり…しかしそれこそがアナウンサーの個性であると私は感じています。放送で救える命があります。皆さんなりの自然な中継だと、また、皆さんのふだんの勉強の結果が出ていたと思いました」

また、加賀美さんによれば「放送後には必ず反省会をする」と言う。

「今回の報道の在り方、伝え方にも反省はあり、とことん話し合うはずです。そして次の放送をよりよく改善していくのです」

情報の伝達を担うアナウンサーたちには今後も災害放送への強い思いを持ち続けてほしい。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班