災害関連死は“防ぎうる死”
山川 東日本大震災で注目を集めることになった「災害関連死」ですが、現在もこれを巡る問題は数多く残ります。あの震災全体での死者・行方不明者は18423人(22年3月1日現在)ですが、そのうち災害関連死者は3789人(22年6月30日)を数えました。
日本で初めて災害関連死が認められた95年の阪神・淡路大震災以降に、自然災害や原発事故被害で命を落とした人の総数は、21500人を越えます。そのうち、5000人以上が災害関連死になります。最近では2019年の令和元年東日本台風(台風19号)、一昨年熱海で起きた土砂災害でも関連死が発生しています。
在間 災害関連死は、適切な支援や防災措置がとられていたら、ゼロにできる“防ぎうる死”と言えます。逆の見方をすれば、災害関連死の事例を検証すれば、被災者がどんな状況におかれ、どんなサポートが必要だったのか教えてくれる。
山川 だとしたら、東日本大震災の3789件の関連死は、いや、阪神・淡路大震災以降の5000人の死は防げた可能性があるということですね。
そもそも災害関連死は、家屋の倒壊や土砂崩れ、津波など自然災害の直接的な被害を生き延びたにもかかわらず、避難中に持病を悪化させたり、体調を崩したりして亡くなる“災害後の死”とも呼ばれます。適切な支援が行われず、防災措置もずさんだから、自然災害が起きるたびに関連死が出続けるということですよね。
在間 そう思います。災害関連死という言葉は広く知られるようになりましたが、さらに掘り下げ、事例を分析し、支援制度や被災者支援に活かしていくべきです。にもかかわらず、3・11の被災自治体の一部は、災害関連死の資料を廃棄していたことが明らかになり、問題になりました。災害関連死を次世代の災害支援や防災政策に活かしていく――そうした発想が抜け落ちているのが、災害関連死をめぐる課題のひとつです。
山川 災害関連死という言葉は周知されたものの、実際はどのようなケースが災害関連死に該当するのかわかりにくい。10年近く取材していて感じるのは、一般の人たちが災害関連死という言葉に抱くイメージと、実態との乖離です。
在間 わかりやすい例を挙げれば、避難所の環境が劣悪なため風邪をひき、肺炎をこじらせて亡くなってしまった。そうした事例が一般の人たちが想像する災害関連死なのだと思います。