「愛さえあればお金なんて」の成れの果て
徹頭徹尾、お金の人である。ある意味、価値観がぶれないのは潔いかもしれない。
彼女の決断力の強さは、お金という揺るがない基軸があるからで、だからこそ、結婚の100倍は気力も体力も消耗すると言われる離婚を3回も成し遂げられたのだろう。その上で「お金のある夫を持つ」から「自分でお金を生み出す」ところまで進化を遂げたのだから、大した根性である。
確かに、世の中の多くのトラブルはお金が絡んでいる。お金があれば、背負わなくてもいい苦労を回避できることもある。だから、相手に資産を求める彼女を否定する気はないのだが、このまま彼女が満足するだけ稼ぐことができたら、その時、ようやくお金の呪縛から逃れられるのかもしれないとも思う。
この年になると「愛さえあればお金なんて」の成れの果てを見て来た。
結婚式であんなに蕩けた笑顔を振り撒いていたふたりが、数年後には「夫の稼ぎが悪いからこの有様」「自分で稼ぎもしないぐうたら妻」と、互いに愚痴をたれまくっている。
愛だけでお腹は満たされない。愛だけで寒さや暑さはしのげない。突然事故や病気に見舞われても、愛だけでは治療費も払えない。生きるということは、お金がかかるということだ。その現実に直面して、愛はやがて疲弊してゆく。
愛とお金。
どっちを選ぶなんて問うこと自体、野暮だとわかっている。愛も大事、お金も大事。両方欲しいが本音である。それは決して欲張りでも我儘でもない。
私の周りには、仕事を持っている女性が多いのだが、独身女性は当然としても、人も羨むような経済的に恵まれた相手と結婚しても、仕事を辞めるつもりはないと言う人がかなりいる。
お金持ちになって、はじめて
お金で買えないものがあることを知った
理由は、仕事が好きだから、生きがいだから、社会と繋がっていたいから、とは言っているが、本音のところでは、自分で稼ぐ術を持っておけば。いざという時でも自分の足で立っていられるからだろう。
もし、夫からひどいモラハラを受けるようになったり、浮気されたり、DVや経済的DVに遭わされたりして、夫婦関係が破綻しても、自分で稼いでいたら別れられる。子供だって育てられる。自分で稼げれば、理不尽な苦労を背負うことはない。
様々な状況があるから、すべての女性に当て嵌めるつもりはないが、お金が心強い味方になってくれるのは確かである。
それでも、人はお金とは別に、心の拠り所を求めてしまう厄介な生き物である。
随分前、ある大物ミュージシャンがこう言っていた。
「お金持ちになって、はじめてお金で買えないものがあることを知った」
お金との付き合いは、ある意味、男との付き合いより手がかかるものである。そのことも頭に入れておくべきだろう。
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