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いったい、どこの貴族の末裔ですか

乗馬服をビシッと決めて白馬にまたがったエイジさんの姿は、アイコン写真の海でも異様に目立った。しかもその騎乗姿がブーツも帽子もジャケットも、一式高級品で揃えているらしくかなり本格的なのだ。

どんな人なのかとエイジさんのプロフィールを読むと、「56歳。職種:経営者。趣味は乗馬、ハワイでのゴルフ、油絵、ヴァイオリン」。

どこかの貴族の末裔?

だって乗馬ってあの衣装やブーツを揃えるだけでかなり高額で、そのうえ馬の騎乗にもかなりお金がかかるとか……。そのうえ油絵とかヴァイオリンとか優雅すぎて生活が想像できない。顔写真は颯爽とした品がいいおじさまで、プロフィールを見るとバツイチの成城住まい。きっと資産家の御一族なのだろう。年収1500万に釣られてか「いいね!」も100近くついていた。

白馬に乗った写真をアイコンにしている56歳男性にマッチングアプリで会ってみたら‥「足立区とか埼玉とかとは面倒で付き合えない」_1
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足跡をつけたその夜、マッチング通知が来た。メッセージ付きだ。

5年前に妻と死別し、子供2人は自立して、今は広すぎる一軒家に一人暮らしで食事もハワイ旅行も淋しくて虚しいと書いてある。何度かメッセージを重ねて会ってみると予想通り土地持ちの資産家で、小さな会社のオーナーでもあって働かなくても資産は充分あるらしい。

「妻も亡くなり息子や娘も独り立ちして経営の仕事も後輩に任せたので、趣味に打ち込もうと思ったが……。もともとが無趣味なので絵を習ったり乗馬をやったり、何をしてもあまりうまくいかなくて。馬はまだ1人ではまたがれない正真正銘の初心者。実力がないから、せめて形から揃えようと高い乗馬服を一式揃えたが、腰痛で2回しか通っていない」