苦悶の日々…ステージへ上がることも拒否し始めた
時は流れ……1969年11月27日に27歳の誕生日を迎えたジミ。だが、この頃の音楽活動は決して順風満帆ではなかった。
同年6月にジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスを解散後、新たに6人編成のバンド、ジプシー・サンズ&レインボウズを結成するも、目立った活動は「ウッドストック・フェスティバル」への出演だけですぐに解散。
その後結成したバンド・オブ・ジプシーズも長続きせず、翌年1月28日のマジソン・スクエア・ガーデンのステージを最後に、同じく解散してしまう。
それでもジミはドラムにエクスペリエンスのミッチ・ミッチェル、ベースにビリー・コックスというメンバーでアメリカへツアーの旅に出た。ロック・シーンの頂点に登り詰めたジミに休む暇はなかった。大勢のファンたちがステージを待ち望んでいたのだ。
しかし本番直前になると不安とプレッシャーからか、毎回のようにステージへ上がるのを拒否していたという。3ヶ月に及ぶツアーが終わったのは1970年8月の初めで、ジミはその時のことについてインタビューで答えている。
「アメリカでのツアーが終わった時、本当はどこかに隠れて、すべてを忘れてしまいたかった。ただレコーディングだけやって、俺に曲が本当に作れるのかどうか考えてみたかったんだ」
「ビートルズから始まった音楽の時代は終わったと思った。何か新しいものが出てこなくてはいけない。それがジミ・ヘンドリックスなんだってね」
ローディーとしてジミの音楽をそばで支え続けてきたジェリー・スティッケルズは、「随分長い間挫折したままだったジミが、あの時には新しいアイデアの洪水を抱えているみたいだった」と、1970年の夏頃からジミにある変化が起きていたことを証言している。