四球数が昨年の倍以上に増えた理由

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打撃に関しては、初球から打てるボールに対してはどんどん振っていくスタイルで、プロ1年目は、135試合に出場して打率.273、プロ2年目は135試合に出場して打率.276とコンスタントに数字を残してきました。

その一方で、四球の数が1年目は29個、2年目は18個と少なく、出塁率という面で物足りなさを指摘されることも多かったように思います。

プロ3年目の今年は、100試合を戦った時点で、打率がほぼ3割、四球が45個と、打率もさることながら、四球の数が倍以上に増えていることに大きな成長を感じます。

これは技術的に何かが変わったわけではなく、侍ジャパン日本代表として、今年おこなわれたWBCを戦う中で、学んだ経験が大きいのではないでしょうか。

WBCでは、福岡ソフトバンクホークスの近藤健介選手が2番打者をつとめていました。今年プロ12年目の近藤選手は、通算打率が3割を超え、通算出塁率は4割を超えるという、まさに日本球界を代表するバッターのひとりです。
WBCでも大谷翔平選手の前を打つ2番打者として、ヒットを打つだけではなく、四球もしっかりと選んで、出塁率.500という驚異的な数字を残しました。

中野選手にとっては、今回のWBC期間中の近藤選手のスタイルが自分の理想とする形に近かったそうです。中野選手自身も、出場機会こそ少なかったものの、14打席で10打数3安打、4四球という数字を残しました。
従来の初球からどんどん振っていくというスタイルだけでは、こういう数字を残すことはできません。

四球を選ぶことが、いかに得点につながる可能性を増やすか、どれだけチームにいい影響を与えるかということをWBCで実感できたことが、シーズンに入っても素直に体現できているのではないでしょうか。

構成/飯田隆之 撮影/産経新聞社