二塁手として派手なファインプレーはいらない
中野選手は、もともと遊撃手として送球に不安を持っていました。遊撃手から二塁手になると、物理的に一塁までの距離が近くなることもあり、送球面での不安はかなり軽減されます。
シーズンを通して考えると、精神面での負担も相当変わるので、岡田監督は、そのあたりも見越して決断したのだと思います。
そもそも、遊撃手として長く活躍するための絶対条件として、打球を捕球することへの不安より、一塁に送球することへの不安がないことがあげられます。
逆に二塁手には、捕球する技術には長けているが、送球面で不安があるという選手が少なくありません。
そういう意味で、中野選手が持つ不安要素を考えると、遊撃手よりも二塁手に適性があったと言えるのではないでしょうか。
今年の春季キャンプで自分が臨時コーチをした際は、主に遊撃手を見ることが多かったため、中野選手とは、あまり話をする機会がありませんでした。ただ、二塁手としての動きで気になったことがありました。
遊撃手は、一塁に送球する距離が長いため、前に動きながら捕球することが多いのですが、二塁手は、送球する距離が短いため、遊撃手ほど前に出て捕球する必要がありません。
そのため、遊撃手から二塁手にコンバートされた際に、最も陥りやすいのは、捕球の際に体重が後ろにかかり気味になってしまい、顔とボールの位置が離れすぎてしまうことです。
中野選手も、まさにそうなっているように見受けられたので、「もう少し低い姿勢でボールに入ることを意識すれば、ミスが起こりにくいのではないか」と本人に伝えました。
今シーズンの中野選手は、二塁手として華麗なグラブトスや、ダイビングキャッチを数多く見せています。二塁手になって、派手なファインプレーが多くなり、守備がよくなったとみられる風潮もあるようですが、自分はそうは思いません。むしろ、派手なファインプレーなんてないほうがいいと考えています。
ファインプレーになるということは、そもそもポジショニングがうまくいっていない可能性があります。ポジショニングを変えて、あらかじめ二歩動いていれば、ダイビングキャッチしなければいけない打球を、普通に正面で捕球できます。どちらが、アウトにできる確率が高いかは、言うまでもないでしょう。
守備機会が増えれば増えるほど、当然、失策数も増えるので、失策数のことはあまり気にしても仕方ないと思いますが、今後は派手なファインプレーをなくしていくことが、中野選手が二塁手のレギュラーとして、長く活躍するためのポイントだと思います。