「ストレスに強い遺伝子」がなくても、ストレスに強くなれる
日頃、ストレスをあまり感じたことがないという人がいたら、とても幸せな状況にあるか、ストレスに強い遺伝子タイプの人かもしれません。メンタルが強いといわれる人は、そのタイプでしょう。
反対に、何かあるとすぐに落ち込み、くよくよ思い悩む人は、ストレスに弱い遺伝子タイプの人、いわゆるメンタルが弱い人となりそうです。そういう人でも、ストレスに強い人になれるのでしょうか?
BDNF(脳由来神経栄養因子)がよく働く脳は、ストレスに対して強く、ストレスに影響されにくい、とわかっています。逆にBDNFがよく働かない脳は、ストレスに弱く、すぐ影響されてしまいます。
ストレスに強いか弱いかは、BDNFが重要なカギになります。しかし、BDNFはその人の持つ遺伝子によって働きの強弱が出てしまいます。だから、残念ながらストレスに強いか弱いかは、遺伝的にある程度、決まってくるわけです。
ストレスに強い遺伝子タイプと、先にお話しした開拓力が強い遺伝子タイプは一致します。ストレスを感じないから、どんどん新しいことをやれるんでしょう。さもありなんと納得できる話ですね。
しかし前項でお伝えしたように「運動」がBDNFの働きに大きく関わってくるのです。運動がストレス解消に効果的なのは、誰もが経験的にわかっているでしょう。
柔道やラグビーに打ち込んでいた私の学生時代の経験からも、小中高校で運動部に入ることを強くおすすめします。年をへて運動不足気味の最近は、「学生時代のほうが断然、頭が冴えていた。当時と比べたら、年がら年中ぼーっとしている感じだ」とすら思うほどです……。やっぱり運動が必要で、BDNFをガンガン出してボケない対策をしなければ、と実行しはじめています。
ちなみに私は運動することで頭が活発に働くBDNFの遺伝子タイプを持っていました。まさに運動部に入っていた学生時代は正解だったというわけです。
若いころ私は、北は青森から南は沖縄まで15都府県に出向き、「内視鏡一本さらしに巻いて」という感じで診療を続けた経験があります。どこかへ行ってくたくたになるまで仕事をしても、ストレスを感じることがなく、むしろおおいに楽しめました。
もしかしたら、学生時代に運動に打ち込んだことでBDNFが出まくり頭が冴えて、ストレスにも強い体質になっていたのかもしれません。