「好奇心遺伝子」が強いタイプは、才能がある人?
開拓遺伝子と呼び方が似ていますが、「好奇心遺伝子」というのもあります。
アメリカ・カリフォルニア大学がヨーロッパの約1万1600人、1人あたり約120万という遺伝子のパターンを対象に、性格との関連を調べました。この大規模な研究によると、好奇心が弱いタイプ、やや弱いタイプ、やや強いタイプ、の3つに分かれることがわかりました。
この遺伝子は、脳の神経細胞にあるニューレキシンというタンパク質をつくり出します。ニューレキシンは、シナプスをつくったり神経伝達物質が出たりすることに関係します。
遺伝子のほんのちょっとした違いで、神経細胞の働きや情報の伝わり方が変わり、好奇心の強弱が出ます。そんな違いが重なっていけば性格まで異なってくると考えられます。
好奇心が強ければ自分の世界をどんどん広げたり、深めたりして、積極的な性格になっていくでしょう。仕事の能力──企画・説明・書類づくり・計算といった能力は同じでも、課題を達成できるかどうかにまで差が出てくるかもしれません。
この大規模研究には、アメリカの著名な精神科医で遺伝学者クロニンジャー博士が考案した「TCI」という気質と性格を判定する検査が使われました。よく的を射ているというので世界に広く普及していますから、ちょっと紹介しておきます。
博士によれば、ヒトには4つの気質(気質因子)があります。
新奇性追求(新しいもの好き)、損害回避、報酬依存、固執の4つで、これらの気質は遺伝の関与が大きく、幼年期から現れてきます。この気質によって私たちは一人ひとり、世界の感じ方が異なるようです。
一方、ヒトには3つの性格(性格因子)があります。自尊心、協調性、自己超越性の3つで、これも遺伝が影響すると考えられていますが、環境の影響も大きく、自分はこうありたいという意識が強まる成人期に成熟します。
これら7つの因子(次元ともいいます)がどう関係しているかが問題です。なぜなら、4つの気質の上に3つの性格が乗るかたちで、個性や人格(パーソナリティ)をつくっているからです。それを調べるためには、用意した240個の短い質問にイエス、ノーで答えていけば、おおよそどんな傾向の人かわかる。——これがクロニンジャー博士の考案したTCIです。日本でもこの検査を受けることができます。