いくつになっても脳細胞は増える
若返りの「BDNF遺伝子」を働かせるには?
ちょっと前まで、脳というのは20歳くらいで完成し、あとは膨大な数の細胞が少しずつ死んでいくだけだ、とされていました。
末期がんの患者さんの脳を調べて「新しい細胞が生まれている」とわかったのは20世紀の末です。現在は、その重要なカギがタンパク質の一種、BDNF(脳由来神経栄養因子)だと考えられています。
BDNFが元気に出てくれば、脳の細胞が増え、脳がよみがえったり若返ったりします。記憶を司る「海馬」や、記憶・学習・感情や行動の制御など高度な精神活動を司る「前頭前野」などで、脳の細胞が生まれ変わることができれば、脳の機能はもっと働くようになるでしょう。なんだか希望がわいてきますね。
BDNFは、運動するとさかんに出てくることがわかっています。ウォーキング(有酸素運動)、レジスタンス・エクササイズ(筋肉に抵抗をかける運動)などの有効性は、本書の別の章で詳しくお話ししましょう。
また、感動して笑っている時間が長いと、BDNFが増える、という研究報告もあります。笑うことで脳内にBDNFが増え、細胞が元気にどんどん再生すれば統合失調症にもプラスのはずだ、と思われています。
世の中、笑って損した人は一人もいない、まさに「笑う門には福来たる」ということでしょう。でも一人あるそうで、金箔屋の主人が大笑いして金粉を吹き飛ばしてしまい、大損をした。——とこれは古今亭志ん生さんの落語で聞きました。