打者にタイミングをとりづらくさせる巧みな投球術

では、なぜ大竹投手がここまでいい結果を残せているのでしょうか? 

コントロールがいい、右打者に対しても左打者に対しても内角球の使い方がうまい、緩急をうまく使えるなど、数多く評価されているポイントはありますが、自分が思う最大の要因は、打者がタイミングをとりづらいことにあります。

同じ球種を投げるにしても、クイックモーションを使ったり、腕の振りに差をつけたりすることで変化球の曲がり幅を変えるだけでなく、打者の雰囲気を察知して、変化を加える投球術も持ち合わせていることから、かなり器用なタイプの投手だと言えます。

また、大竹投手は12球団すべてのチームと対戦経験があり、その初対戦での成績が9勝0敗というデータもあります。このことからも、初見で攻略するのは難しく、打者が対応するためには、時間がかかる投手であるということがわかります。

仮に、自分が大竹投手と対戦するならば、おそらくタイミングを外されるだろうと考え、あえてタイミングを合わせにいかないという方法を選びます。こちらがタイミングを合わそうとすると、余計なことを考えて、どうしても後手に回ってしまいます。

それなら最初からタイミングを合わせにいかず、極端に言えば、足を上げずに打つぐらいでもいいかもしれません。

鳥谷敬氏
鳥谷敬氏

打者にとって、タイミングをとるというのは非常に大切な作業ですが、シーズンを通して同じ先発投手と5回も6回も対戦することは、ほぼあり得ません。そういう意味では、タイミングが合わないピッチャーに対しては、あえて合わないままにするというのも選択肢のひとつとして持っておくべきだと思います。

無理にタイミングを合わせようとして、バッティングを崩し、本来タイミングが合うピッチャーを打てなくなるほうが、シーズンを通して考えるとマイナスの面が大きいからです。