SNSやマンガがやめられなくてスマホを一晩中…うつ病と診断
休職する前のある日、朝起きる時間になっても体が鉛のようになって動かず、こころは仕事に行かなかった。それきり、どうしても仕事に行くことができなくなった。起き上がって支度をしようとすると、吐き気と頭痛がした。お腹も痛くなり、うずくまった。
欠勤が4日目になったときに職場から診断書を持ってくるように言われ、こころは精神科を受診した。こころは、うつ病で3か月の休職が必要と診断された。
休職して1か月経ったころ、実家で昼と夜が逆転してスマホを見続けているこころの姿を見た母親が心配し、こころを私の診察室へ連れてきてくれた。
診察室では、私の質問に答えるのはほとんど母の方だった。こころが口を開きそうになると、母がしゃべり出す。ある程度話を聞いたところで、母にいったん診察室を出てもらった。そして、私は1対1でこころの話を聞いた。
こころは、この1年続いた職場でのハラスメントについて私に打ち明けてくれた。SNSやマンガがやめられなくてスマホを一晩中見てしまい、朝起きられずに困っていることも話してくれた。
職場環境を変える勇気もなく我慢している
「初めて、こんなことを人に話しました」
「お母さんにも言っていないのですか?」
「ハラスメントのことは職場に電話されそうで嫌だし、スマホのことは話したらやめなさいって言われるだけだと思いました」
「たしかに、そうなったら嫌だよね。私には正直に話してくれてありがとう」
私は、こころに質問した。
「こころさんは、これからどうなったらいいと思っていますか?」
「今はどうしたいのかよくわかりません。とにかく仕事には行きたくないです。行こうと思っても体が拒否するし。でも、ずっと実家にいるのも嫌です」
「仕事に行きたくないのは、どうしてですか?」
「今の職場は、先輩と考えが合わなくて、仕事で納得いかないことがたくさんあります。環境を変えたいなと思うけど、勇気もなくて我慢しています」