「人口減少を受入れよう」という主張

さて、移民は必要ないとの意見の中に「人口減少するのはやむを得ない。減少を前提に最適な社会を作ればよい」という考え方がある。

ベストセラー『未来の年表』(講談社現代新書、2017年)の著書で知られる河合雅司氏は、「人口減少によって大きな問題は発生するが、移民の受入れよりも、『戦略的に縮む』ことで日本は小さくとも輝く国になることができる」と主張する。

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そして「戦略的に縮む」ためとして、五つの提言を行っている。

まず「高齢者の削減」として高齢者年齢を75歳以上と再定義する。このことで従来の高齢者に相当する人びとの活躍を促進する。

二番目に、利便性が高い24時間営業の店舗をなくし、24時間社会からの脱却を説く。

三番目に、行政サービスの効率化と集中のため、人口密度が低く効率の悪い地域から高い地域への移住を促進し、非居住エリアを明確化する。

四番目に、遠く離れた都道府県同士を「飛び地」として合併し、その結果、大都市部と地方の自治体が結びつきを深めるという「都道府県の飛び地合併」を主張する。

五番目に、国際分業の徹底として、日本の得意分野に絞ることで、日本人自身の手でやらなければならない仕事と、他国に委ねる仕事を思い切って分けてしまう。

また外国人の受入れについては、将来的に「移民としてやってきた人と日本で誕生したその2世の合計人数が、日本人を上回る日が遠からずやってくる」「日本人が少数派になることを許容すること」として日本が「別の国家」になることの危惧を提示する。

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『人口亡国 移民で生まれ変わるニッポン 』(朝日新書)
毛受 敏浩
2023年6月13日
935円
256ページ
ISBN:978-4022952240
"移民政策"を避けてきた日本を人口減少の大津波が襲っている。GDP世界3位も30年後には8位という並の国になる。まだ、日本に魅力が残っている今、外国人から移民先として選ばれるための政策をはっきりと打ち出して、この国を支える人たちを迎えてこそ、将来像が描ける。
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